《 お客様のニーズを知るための『手足がなくなる』 》

 「私の思いを上手に伝える」ことについてのお願い

                                                  

 【労使協議の場での発言】

 

 昨日の、経営特小委における話合の中で気にかかることがありましたので、私の思いをお伝えしたいと思います。

「お客さまと直接面談する作業を外注化することにより、お客さまニーズを知るための『手足がなくなる』」との表現について、考えてみました。

既にお気づきとのことと思いますが、重ねてお願いいたしたく、私の考え方を発信させていただきました。

  

  『手足がなくなる』という表現については、いくつかの見方が考えられます。

  

はじめに、社会に障害を持ちながら生活している人たちは大勢おりますが、それぞれが自分自身の今を受け入れ、幸せに自分らしく生活しています。しかし、時に、その障害ゆえに、特別な存在として見る周囲の目を感じたり、常に介護を必要な人と見られ、自分で努力し、そのハンディを乗り越えることすらできない人としてしか見ない周囲からの意識を常に感じ、「人間としての尊厳」までも傷付けられながら生活することを強いられている人も少なくないと感じています。

  

この『手足がなくなる』という比喩は、「手足がなくなると私たちは何かができなくなって困る」との思いを伝えるために用いられたのだと思います。

このことと手足のない人を無理に考え合わせて論じることも必要ないのかもしれませんが、その様な身体的状況を持ちながら生活している人が、この比喩的表現についてどのように感じるだろうかという視点は大切だと考えています。

日常生活の中で、私たちが、見た目に分かる身体的障害を持った人たちを、どのような思いで見ているかについても、思い返してみたいのです。

  

もう一つの見方は、時に、『手足のように使う』という表現を持って、ある人たちを自分の指示どおりに動くことを期待し、そこに働く人たちをそれぞれの役割を自覚した「主体的に行動する人としては見ていない」思いとして伝わることも考えられます。

 

□「手足のように使う」と評された人たちはどんな人

  

私たち『東京ガス』の第一印象をお客さまに与えているのは、お客さまに最初にお目にかかった保安を守る一人ひとりなのです。営業でお客さまと会話を交わしたその人なのです。その一人ひとりが、東京ガスとして行動し、お客さまのニーズをお聴きし、お客さまの利益のために東京ガスができる最大のサービスは何かを判断し、東京ガスの組織を挙げて、その実現に行動を起こしているのです。

 その期待を担い、東京ガスで働く一人ひとりの労働者が、その自負をもって働いているのです。

 私たちの代表者として、その思いを伝えるならば、今回の表現は適切さを欠いた表現ではないでしょうか。

 

□本心は何を伝えたかったのでしょうか

  

今回、労働組合として、第一線で活躍している労働者の果たしている役割の重要性を主張するためには、具体的に実践していることを示し、その状況がなくなることへの不安と、今後の取組みについて確認し、できることならば、東京ガスグループとして、これまでの成果を確保するために、東京ガスが取り組むべきことについて提案しても良かったのではないでしょうか。

 

 具体的には、東京ガスが、お客さまと直に面談する中で、お客さまのニーズや社会の動きを的確に捉え、その情報によってお客さまの満足と信頼を勝ち得てきた成果は大きく、その作業が外注化されることによる影響が少なからず心配されますが、東京ガスグループとして、お客さま情報の活用等への取組みについて会社側の考え方を確認することも一案です。

  

 □自分たちの重要性を訴えるために誰かを貶めていませんか

  

このことに関連して、気になる発言があったように感じております。

それは、「業務の外注化、アウトソーシングによって、お客さまからの信頼を得ることができなくなる恐れがある」ように発言しておられたと受け止めましたが、もし誤った受け止めでありましたら、ご指摘ください。

 

これまでの、東京ガス社員のお客さまへのサービス体制は、十分にお客さまからの信頼をいただけるものと、私も信じております。この信頼は、百数十年のその時々に、与えられた役割を誠実に果たしてきた諸先輩方の成果であり、今東京ガスに働いている私たち一人ひとりの努力の結果なのです。

 

しかし、既にかなり以前から、東京ガスは、お客さまの期待する当社のサービスを外注化し、多くの業務を東京ガスグループ各社で働く人たちが行っているのです。当然その会社で働く一人ひとりが、お客さまからの満足と信頼を勝ち取ろうと努力しており、その成果が、私たち東京ガスのブランドイメージを高く評価されることにつながっているのです。

  

私は、私たち東京ガスで働いている全ての労働者が、常に前を向いて、自分の責任を果たす中で企業に貢献し、社会に貢献していることに誇りを持っていますが、そのことを主張することに力を込めるあまり、協力企業で働いている人たちを、結果的に「侮辱」したことは、とても残念で、怒りさえ感じております。

 

東京ガス労働組合の、みなさんがそのような思いでないことは、十分理解しているつもりですが、昨日の発言を協力企業のみなさんの前で自信を持って言えるかどうか、考えていただけるとうれしいです。

  

□グループのみんなでつくる企業ブランドに誇りをもって

  

『東京ガス』ブランドへの評価は、東京ガスグループで働く全ての人たちが作り上げているのです。決して私たち東京ガスの組織に属する人たちだけではできないことなのです。

 「新しい公益企業」として評価される中で、グループとして評価されることを最も重要な取組みの一つと考えていることが改めて、社長のメッセージの中にも謳われています。

 当たり前のことを、一つひとつみんなで確認していくことが大切な時代なのです。その大切なことを日常の生活の中で具体的に行動することが、グループとしての組織力を十分に発揮することにもつながると信じています。

  

誰もが、パートナーとして関わることが大切だと知っています。しかし、残念ながら、その大切なことが、最も重要な時に忘れ去られてしまうことも多いのです。

 素晴らしい職場、そこで働くことを誇りに思える職場にしていきたいために意見として参考にしていただければうれしいです。

  

勝手なことを言わせていただきましたが、激動の時代に、最も大切なことは、「人」であり、その持てる力を十分に発揮させる仕組みづくりなのです。

今後のみなさまの活躍は、これからの東京ガスグループで働く全ての人に、大きな力と勇気をもたらしてくれることでしょう。