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《 ハラスメント事件解決のステップ 》

 

 

 

組織の力関係を背景とした職場いじめ(パワー・ハラスメント)とセクシュアル・ハラスメントは、同じ土壌の上に発生する問題です。

 

問題が起きる組織は、組織全体の人権意識の低さから、様々な人権侵害を次々と再生産していくのです。

 

ハラスメントが起きにくい社会とは、加害が発生しにくい社会であると同時に、人権侵害が起きても被害者が回復しやすい社会です。

 

 

 

1.被害の発生

 

 

 

1)自分が被害を自覚した時から、職場はサバイバルの場となる。

 

選択肢=>①逃げる ②耐えて生き延びる ③適応して楽になる

 

2)加害者が上位、あるいは雇用者側で、さらに生活のために耐えざるを得ない状況であれば、

 

職場は苦痛の場(辞められない、逆らえない)となってしまいます。

 

3)問題が起きていても自覚せず、そういうものだと思って耐え続けると、

 

息苦しさを抱えたまま時間は経過していき、やがて精神的なストレスを抱え込むことになり病気になりかねません。

 

4)場のヒエラルキー(厳重につくられた上下の段階的組織)にうまく適応できた場合、感情が麻痺した無関心な第三者、あるいは加害者に追従する二次加害者、あるいは主体的な加害者の一人としてその場に登場することになります。

 

 

 

2.加害者のマイナス影響が被害者の中で拡大しはじめる

 

 

 

1)加害者への恐怖で、身動きが取れなくなりあす

 

例)「建物の中ですれ違いでもしたら、心臓がバクバク言う」

 

「声を聞くとフリーズしてしまい、抵抗できない」

 

「張り付いた笑顔で、即座に対応してしまう」(自分の苦痛を知られるまいと努力する)

 

「ご飯を食べても味がしない」「音がよく聞こえない」「触れた手がただれた(実際に!)」

 

2)職場の環境全体が加害者の協力者に思える

 

(加害者がいなくても、被害者のイメージの中で思い込んでしまう)

 

例)「あの場に行くのがイヤ」「建物に足を踏み入れることができない」

 

3)加害者の支援者が現れる

 

例)「あなたにも落ち度がある」「黙って言うことを聴いていればいいんだ、考えるだけ無駄だ」

 

「いつまでもくだらないことにこだわらず、仕事をしろ」

 

「上司を陥れるつもりか」という声が、現実にダメージを増幅する。

 

4)加害者のことが頭から離れない(妄想)

 

例)「同じ職場では働けない」「上司の顔が浮かんできて夜も眠れない」

 

(加害者の力が関連領域へ拡大)

 

「東京へ行くと、思い出す」「経理の書類を見ると、吐き気がする」

 

「バスのアナウンスが上司の声に聞こえる」

 

(地域に拡大、物質にも)

 

「私が日本のどこへ行っても、きっと報復してくる」(日本中に拡大)

 

5)心身に異常をきたす

 

「いつもイライラして仕事に集中できない」「左の耳が聞こえない」

 

 

 

3.被害者の心理状態

 

 

 

・私には味方がいない、誰にも頼れない、誰を信じたらいいかわからない。

 

・組織は私に沈黙を強いている、従わなければ排除される、排除されたら生活はなりたたない。

 

※この時点で「加害者が悪い」ということを自覚すると、周囲との対立、組織との対立を招き、周囲からのバッシングによって排除される危険にさらされる。よって、「私にも落ち度がある、私が努力して関わり方を変えれば、状況はよくなる」というような自己責任の思考回路にスイッチを入れることで破壊的な対決を回避し、身を守る。しかし被害者の自由、安心して働ける状況は制限され、「世の中とは理不尽なものなのだ」「弱い人間は踏みつけにされても仕方ない」という絶望感でパワーが減少していく。いずれは逃げるか対決するかの選択を迫られる。

 

 

 

4.エンパワーメント

 

 

 

加害者との力関係をひっくり返していく手順を踏むことで、力を取り戻す

 

=>自分の安心な場所、理解してくれる人、支援してくれる人を増やしていく

 

1)仲間を見つける(他者への信頼感が回復する)

 

「誰も理解してくれない」「私は一人」

 

=>支援者が見つかる、友人が見つかる

 

2)組織内部の理解者を見つける(少数でも大丈夫→組織への信頼感が回復する)

 

「職場は敵だ」「組織・会社・大学は敵だ」

 

=>「加害者はともかく、○○さんは理解してくれている」

 

「職場の人は、私の味方」「少なくとも、上司の○○さんは味方」

 

3)法律専門家や組合などを味方につける(社会への信頼感が回復する)

 

「加害者のやっていることは社会的に許されない」

 

「必要であれば、裁判で賠償を求めることができる」

 

=>「私には加害者に抗議しやめさせる力がある」という実感がわく

 

 

 

※加害者と被害者のパワーが拮抗すると、なんとか力を取り戻すことが可能になります。

 

※場合によっては、特になにもアクションを起こしていないこの時点でも、

 

相談が終了してしまうケースもあります。

 

心の安定を取り戻すと同時に生活のリズムが安定し、怒りから解放されます。

 

例)「バカといつまでも付き合う時間がおしいので、もう会社を辞める」

 

「分かってくれる人がいるから、気が済んだ」

 

4)残念ながら自殺(物理的にも、精神的にも)にいたるケースも

 

・周囲のサポートが得られない、あるいはセルフケアができない場合、非常に傷ついた精神状態を維持することになり、徐々にうつや引きこもり、パニック障害など症状が進んでしまいます。サポートしてくれる相手が現れても信頼出来ない、逆に怒りをぶつけたり、精神的・物理的にも暴力を振るうなどの行動をとってしまうケースも少なくありません。結果として、孤立化してしまいます。

 

・外出できない、電車に乗れないなどの状況から働くことが出来なくなり、経済的にも逼迫してしまいます。

 

・ひどい場合は幻聴・幻覚によって入院を余儀なくされ、実際に自殺するケースもあるのです。

 

 

 

考えられる原因

 

・加害者の攻撃による辛いダメージに加え、社会的サポートを受けるチャンスが持てないでいる。

 

・信頼した人から繰り返し裏切られるなど、さらに深く傷つく経過があった。

 

・「人に頼ってはならない」「相談するのは弱い人」「弱さは悪」と思い込んでいる。

 

・すでに何かの要因で精神的にギリギリの状態だったところに、さらにダメージが重なった。

 

 

 

5.加害者と対決する

 

 

 

・加害者を追い詰め、自分の行為の責任を取らせる

 

・加害者との対決を通して、被害者の心の中の加害者像を小さくする

 

例)「やっぱりヤツがおかしいんだ」「あいつは卑怯で不幸な人間だ」と決めつける

 

・社会への信頼を取り戻す 「やっぱり世の中、許されんことは許されん」

 

・自分への信頼を取り戻す 「私は自分を救う力がある」

 

 

 

6.解決のバリエーション

 

 

 

当事者の置かれている状態に応じてさまざまなバリエーションを組み合わせ問題に向き合います。

 

常に事件の内容についての詳しい被害のヒアリング+書類作成

 

⇒事件の内容を整理します。(裁判のときにも必要になります)

 

 

 

1) 今も被害が継続し、体力的にも限界を超えている場合

 

休職、入院など緊急避難(休暇・休職)措置が必要です。「明日は会社を休みましょう」

 

警察に被害を届け出ます、病院へ行って証拠に残します、診断書の発行をしてもらいます。

 

信頼できる上司に相談する、相談した内容は日記に残します。

 

友人にメールで相談し、そのメールは証拠として残します。

 

カウンセリングを受け、カルテを残してもらいます。

 

リフレッシュ(マッサージ、治療、映画、趣味、外食、なんでも)します。__

 

 

 

2) 被害が継続しており、何とかしたい。

 

証拠を押さえておきます(テープ、コピー、FAX やメール、メモ、写真)

 

現場の音声を採っておきます(レコーダー・携帯等)

 

護身術を習ってみます(セルフイメージの強化)

 

仲間を見つけます「…もしかして、あなたも、こんな目にあったことない?」

 

・ 誰かに相談してみます

 

「実は今、こういう状況で援助が必要なのですが・・・」

 

情報収集(同僚、上司、関係の部署の人々)

 

「ご迷惑はかけません、何か知っていることがあったら教えていただけませんか?」

 

「ご負担とは思うのですが、今のお話を後日証言していただけないでしょうか」

 

家族に相談する(ケースによる)

 

 

 

3) 被害は止んでいるが、日々怒りが渦巻いて自分でもどうしていいかわからない。

 

クリニック、カウンセリングなどの治療を受けてみる(信頼できる臨床家を探す)

 

詳しいヒアリングによる状況整理から、次のアクションを考える

 

信頼できる味方を増やしていくため、相談窓口に相談する。

 

・同じような体験を持つ人とつながりを作る

 

自助グループに参加する、関連する集会やイベントに参加する

 

 

 

4) 相手に対する怒りや恐怖より、「一体、なぜ?」という疑問でいっぱい

 

相手へ手紙(内容証明郵便も有効)を出す

 

・ 相談窓口等の第三者を挟んで、加害者と話す

 

 

 

5) 組織に責任を取らせたい、職場の環境を改善したい

 

組織の窓口に、調停あっせん、苦情の申し立て、調査、加害認定、処分などを要望する。

 

申し立てる前に、必要な情報はすべて確保すること。業務用パソコンの中に残っているメールのバックアップ、書類など

 

復職の支援(リハビリのためのボランティア、リワークプログラムなど)

 

救済措置(両者の異動、部署への説明会、謝罪掲示、組織内での事件公表など)

 

・ 異動は人事担当者に事情を話し、力を貸してくれるように依頼する。どこに異動するか、異動後の出張場所の管理など

 

異動できない場合は、時差出勤や、場所のすみわけ、階段の使い分け、資料室や食堂の使い分けなど。(被害者より加害者のほうが生活しにくいようにすると、なおよい)

 

加害者の教育研修の義務付け(定期的に)

 

・ 企業研修の実施要請、啓発パンフレット作成、ガイドラインの充実など

 

 

 

 

 

7) 加害者に社会的責任をとらせ、世に知らせたい

 

裁判、記者会見、ホームページでの公表など(名誉毀損にならないよう注意)

 

運動体の立ち上げ、支える会のPR 集会など(傍聴の協力要請など)

 

ビラまき、雑誌への掲載、体験談の出版など

 

裁判が終わっても謝罪しない場合、判決について取引先や業界への情報リーク、体験談の出版など

 

(※相手が、公の場で被害者を誹謗中傷することが止まず、他に被害者の名誉回復の手段がない場合、最終手段としてありうる。ただし、書面でのリークは、場合によっては違法なので、弁護士と相談したほうがよいでしょう)

 

 

 

7、解決に向けた職場環境配慮義務の実践

 

 

 

法整備も不十分な中でハラスメントの判断も明確でなく、また職場においては加害者(上司や多数は)への処罰は甘くなり、被害者(部下や少数派)への風当たりも厳しくなりがちで、問題の解決も難しいのも事実です。最終手段である裁判も金銭賠償が基本であって、問題解決に至る万能の道具ではありません。

 

ますます厳しさを増す職場環境においては、一人ひとりが人間として大切にされその力を大いに発揮できる職場環境づくりが必要なのです。まさに組織としての一体感と協力体制が求められる状況にあるのです。