《 コンプライアンス(compliance ってな~に?》

 

コンプライアンスとは、企業が活動する上で、その活動にかかわるあらゆる社会のルールに則り活動することを言います。

社会のルールとは、法令はもとより、国際社会が定めた条約など広く社会規範と言われるもののほか、業界で定めた規範や企業が独自に定めた各種規則や行動基準、そして企業が社会に向けて発信した様々なメッセージも含まれます。

 

すなわち、“コンプライアンスを守る”ということは、企業が社会ルールを理解して日々の活動における行動基準を明確にし、社会のルールに則って“フェアな企業活動を行う”ことを意味します。

見方を変えれば、社会の利益、社会生活者の利益、そして企業の利益を大切にしながらそれらの実現に向けて企業活動を行う“Win-Winの考え方”ともいえるのです。

  

もともとは1960年代に米国で独禁法違反、株式のインサイダー取引事件などが発生した際に用いられた法務関連の用語であるため、「法令遵守」と訳されることが多いですが、“compliance”は「(命令や要求に)応じること」「願いを受けいれること」を意味し、近年では守るべき規範は法律に限らず、社内規範、社会通念、倫理や道徳はもとより国際社会のルールをも含むと広く解釈される方向にあります。このことは、企業活動の影響が様々な人たちに大きくかかわってきていることによるものであり、企業活動がグローバルに展開する中で、コンプライアンスへの要求はより一層強まってきているのです。

  

企業を取り巻く法律や規則は、民法や商法をはじめ独占禁止法、不正競争防止法、労働法、消費者保護法など多数あり、監督官庁の命令・指導など様々なものがあります。さらに、営業活動や市場競争の公正さ、消費者などへの情報公開、職場環境(過労死、セクシュアル・ハラスメント、パワー・ハラスメントなど)、公務員や政治家との関係、証券市場における取引など、多様な面で高い倫理(企業倫理)が求められるようにもなってきており、その要求内容も時代の移り変わりによってより広範で高いレベルで期待される傾向になっています。

企業活動が国際化した今日、国連が定めた条約や取引先の国の法律等の順守も求められています。

 

企業は、こうした多岐にわたる規則・規範を全役員・従業員が遵守し、もし違反行為があった場合には、早期に発見して是正できるマネジメント体制(コーポレート・ガバナンス)を作ることが求められています。また、業界慣行、社内ルールがより広い視点で法律や社会通念と相反していないかといった第三者的チェックも必要となっています。

  

コンプライアンスの重要性が叫ばれるようになった背景には、違法行為や反社会的行為を行って、消費者や取引先の信頼を失い、事業継続が不可能になる企業が頻発するようになったことがあります。企業にとってコンプライアンスは、リスクマネジメント活動としてとらえられている場合が多いようですが、“compliance”の原義に戻って、社会からの信頼を高めるための戦略的活動として取り組んでいる企業も増えてきています。

  

今日、国際的投資会社は、企業に対して国連が採択した「世界人権宣言」を正式に賛同することを表明しているかを確認しています。

 人種差別からの解放、奴隷制度からの解放、組合・団体形成の自由および団体交渉の自由、青少年の労働を管理する政策、服役者による生産品の活用政策、従業員の健康と安全を保障する政策をもっているかを確認しています。

 ■経営者は人権政策への責任を負っているかを確認しています。

 ■企業活動による地域社会への人権に関わる影響度について調査をしているかを確認しています。

 ■従業員や地域住民への人権侵害で企業が訴えられた場合、どのような対策を取るかを確認しています。

 ■取引先に対して人権に関わる基準を設けて、万が一、違反した場合にはどのような対応を取るかを確認しています。

 ■人権政策に関わる従業員教育(情報提供や研修)を行っているかを確認しています。

 ■人権に関わるマネジメントシステムを構築しているかを確認しています。

 ■人権に関する監査を行っているかを確認しています。

 

まさに企業の人権政策は投資をするにふさわしい企業かどうかの判断基準になってきているのです。

  

さらに、より広い意味で、社会的存在としての企業活動への期待を示すものとして近年CSR(企業の社会的責任)あるいはSR(あらゆる組織における社会的責任)という取り組みが広くなされるようになってきていることも、認識しておく必要があるでしょう。