《 ハラスメントに基づく労災認定・裁判例 》

 

■セクハラでうつ病になった場合の労災認定を厚労省が労働局に徹底するように周知(200512月)

厚生労働省は12月1日付けで全国の労働局に、職場でのセクシュアルハラスメントが原因でうつ病などの精神疾患になった場合に労災の対象になる、とする通達を出した。これは、認定基準が変更になったというわけではなく、全国の労働基準監督署でセクハラの捉え方や指針運用が統一されていなかったことから、判断基準を徹底させるために周知を行った。

なお認定基準は、セクハラがあった事実とその後の事業主の対応や職場環境の変化などを総合的に見る。 

上司のパワハラと労災認定 遺族が2審で逆転勝訴(200811月) 

 

大手運送会社の子会社課長だった男性(故人)が、不整脈による脳梗塞で後遺症を負ったのは、上司の部長から長期間にわたり叱責を受けたパワーハラスメント(パワハラ)が原因として、甲府市に住む妻(60)が労災認定を求めた訴訟の控訴審判決で東京高裁は12日、請求を棄却した1審判決を取り消し、労災と認定した。 

南敏文裁判長は「上司は男性を起立させたまま、執拗に2時間以上もしかるなどしており、不整脈は、頻繁に繰り返された異常な叱責によるストレスなどから生じた」と、パワハラとの因果関係を認めた。発症前1ヶ月の時間外労働が77.5時間と、脳梗塞などの発症の危険性が高まる45時間を超えていたとも指摘した。 

判決によると、199414月の間、当時47歳だった男性は計9回にわたり「質問にはすぐに答えろ」「指示された仕事はすぐにしろ」などとしかられ、同4月に脳梗塞で倒れた。 

男性は、右半身まひと重度の失語症を負い、97年に退職。2006年に別の病気で死亡した。

 

パワハラ苦で自殺 東京地裁が労災と認定(2007.10.

 

A製薬会社の静岡営業所に勤務していた男性=当時(35)=が自殺したのは、上司の暴言など「パワーハラスメント」(パワハラ)が原因だとして、男性の妻が労災を認めなかった静岡労働基準監督署の処分取り消しを求めた訴訟の判決が15日、東京地裁であった。渡辺弘裁判長は上司の暴言が自殺の原因になったことを認め、国に処分の取り消しを命じた。 

原告の代理人弁護士によると、パワハラを自殺の原因として労災を認定した判決は全国で初めてという。 

渡辺裁判長は、上司のパワハラを「男性の人格、キャリアを否定する内容で過度に厳しい」と指摘。その上で「男性の心理的負荷は、通常の上司とのトラブルから想定されるものよりも重い」と判断し、「男性は仕事のために鬱(うつ)病になり自殺した」と結論付けた。 

判決によると、男性は平成9年から、静岡営業所で薬剤の営業を担当。営業成績が良くなかったことから、14年に同営業所に赴任した50代の係長に「存在が目障り」「給料泥棒」「背中一面にフケがベターっと付いてる。病気と違うか」などとパワハラを受けた。 

男性は14年12月ごろから鬱病の症状を見せ始め、15年3月に自殺した。男性の妻は16年、同労基署に労災を申請したが認められなかった。
男性の妻は、同社と係長に対して、約1億円の支払いを求める訴訟を起こし、昨年9月に和解が成立している。

 

パワーハラスメントの判断基準は?

 

業務上必要な指導の範囲を超えたいやがらせ行為であるか否かがポイントです。
最近、職場におけるいじめがパワーハラスメントとして注目されるようになりました。
 

この背景には、職場環境の変化、それに伴う人間関係の複雑化などがあると考えられます。 

職場におけるパワーハラスメントの事例としては、上司の部下に対する、言葉や態度による暴力、できもしない事柄についての執拗な要求、仕事をさせないなどの精神的苦痛を与えること、などがあります。 

ここで問題になるのは、上司にとって部下に精神的苦痛を与えることが目的化している場合であっても、指導育成や業務命令などに隠れて問題が表面化しにくいことです。 

裁判になった場合は、その行為に業務上の正当性があったのかどうかが争点となります。 

実際の判例では、業務とは関係ない草むしりやガラス拭きなどを業務命令という名目で行わせた事例があります。 

この場合は、業務命令が人事管理権に基づくものだとしても、「業務の範囲を超えて著しく苦痛をあたえる」といった 人権を侵害した不法行為に該当します。 

そのため、慰謝料の請求が認められました。もちろん、全てのケースで同様の判決になるとは限りません。

 

《職場での判断基準は》

 

 判断基準は部下にあると考えておくことが必要です。 

例え正しい指導方法であっても、部下がその趣旨を理解できず困っているのに、部下の心情を無視してやり方を変えずに繰り返し同様の指導を行えば、ハラスメントになりかねないと考えられます。 

部下指導は部下の能力や理解力に合った具体的な内容であることが求められます。 

何よりも、上司の重要な役割の中には、部下が期待する目標を達成し、成長するために最善の支援をすることにあるのです。 

上司基準ではなく部下基準で、部下の最善の利益の為にあなたが思いつく、できる限りの支援を展開してみましょう!