事例 6「上司のやりかた」
中途採用で、入社してきた課長について相談したい。
今度の課長は、今までの上司とはやり方が全く違っていて、戸惑っている。たとえば、今までの上司は、朝は1時間前には出社していて、出社してきた人に、前日何があったにしても元気に挨拶してくれた。ところが、今度の上司はギリギリになって出社してきて、私たちが挨拶しても、「あ、おはよう」とか口の中で言いながら、そそくさと席に着く。部下より遅く来るなんて信じられない。
月曜日にプレゼンをする人がいて、その資料準備をみんなで手伝おうとしていたが、上司は、「明日家族旅行に行くので、今日はもう帰るね」と帰ってしまった。予定を変えられないとしても、もう少し優しい言い方があるのではないかと思う。むしろやる気をそがれてしまった。
もともと上司は、「能力のある人は、早く帰るものだ。僕は7時には帰りたいね」と言っていた。確かに、残業しないで、仕事をきちんと終えて早く帰ることは理想かもしれないが、自分は優秀で私たちとは違うんだと言われているようで、カチンとくる。なんでもかんでも前の上司と比べるのはよくないと思うが、あまりにも違うので、とまどっている。能力はあるのかもしれないが、今の上司を尊敬することができない。
Point
・上司(他企業からの転入)と部下の職場運営に対する認識のギャップ
・上司と部下の信頼関係の未成熟
・人事の中途採用者職場配属にあたっての配慮不足(任せるだけでは放任)
中途採用の場合専門性を高く評価するが、管理者としての指導を怠る場合が多い
○管理者としての心構えの徹底と職場運営の在り方
○職場への紹介
○配属後の状況確認(上司との面談・部下との面談やアンケート調査等)
全職場との違いがあるのは当然であり、配属の責任を持つ人事は、一定期間関心をもって観察し、必要があれば適切な措置を行うことが求められます。
取組の視点
□上司への期待
・朝のあいさつ
○不明確なあいさつは時として相手の存在を軽んじているように受け止められる
○上司に対して「元気がありませんね、何か心配でも」と声をかけてみる
○自分が感じている不快感を素直な気持ちで上手に伝える
◇アサーティブな表現 ◇自分の期待を伝える ◇自分の思いを素直に伝える
<留意点>
相手を“悪者”にしない
上司だから「○○して当然だ」という思いは持たない
上司にも体調不良の時や悩み事を抱えていることもある
大きな声で返事を苦手に思っている人もいる
○上司として目的意識を持って朝のあいさつをより効果的に行う
◇朝一番の元気なあいさつは周りの人にも元気を与える
◇相手の返事で、相手の心身の元気さを推し量る
◇+1で相手との関係度を高める
「今日は元気そうだね」「先週君の評判を聞いたよ、がんばってるね」
「元気なさそうだけど、何かあったのか」「何かあればいつでも相談に乗るよ」
・上司からの支援
○上司の力を活用する
◇事前準備
上司は様々な経験を持っています。ましてや他企業での経験を持つ上司は、部下にとって大きな力となるはずです。
前もって準備をしたうえで、積極的に支援を要請しましょう。
もちろん上司の都合を配慮したうえで、スケジュールを調整してもらうことが大切です。
何でもかんでも、上司ならやって当然だと考える前に、チームとしてどのように仕事を進めるか考えて、取り組むことが必要です。
◇報告と相談
プレゼンの概要(時期・対象・内容・期待効果)を上司に報告し、上司の期待に対応しているか確認しましょう。
期待する支援の内容(内容への助言・チェックとその時期・同席の必要)を伝えましょう
□職場の運営
・仕事の進め方
○仕事の進め方への意思統一
企業によっても上司によっても仕事の進め方は違うものです。他企業から転入してきた上司と部下との間では違うのが当然です。もしやりにくさを感じているならば、その旨と期待する支援の内容を具体的に上司に伝え、検討してもらうことが必要です。
この時に、日頃の上司の支援について感謝の意を表明することを忘れてはいけません。
もし感謝したいことがないとしたら、日ごろの部下としての上司への対応にも問題があるといえます。上司に対する関心、仕事に関する質問と支援の要請をすることなく、ただただこれまでの仕事を繰り返しているか、上司の指示を待って仕事をしているとしか思えません。
積極的に上司に自分をアピールし、より成果を上げるために大いに上司を活用してみましょう
<留意点>
元上司についてのコメントは控える
相手を“悪者”にしない
自分自身が期待することを自分の言葉で具体的かつ明確に伝える
○人事の対応
他企業から転入した管理者は、新しい職場での職場運営について問題を抱えるのは自然のことです。そこで、1カ月経過後に面談を実施し、現状把握と課題について話し合うことが重要です。事前に部下たちにもアプローチして情報を収集することが考えられます。
すべて批判のためではなく、より良い職場運営を創造するための支援として行います。
課題が見つかったら3カ月のうちに改善するよう取り組みましょう。
□信頼関係の構築
・信頼関係は業務上の良好なコミュニケーションによる相互理解から生じます
○朝のあいさつ ○帰社時のあいさつ ○業務終了時のあいさつ (あいさつは+1)
○業務の連絡・報告 ○情報の提供の依頼と情報提供への感謝表明 (感謝は次への行動のエネルギー)
○業務に関する相談、支援の要請 ○問題の提起と職場全体での検討要請 (相互理解が職場の潤滑油)
○家庭状況の方向と業務上の配慮への要請 ○適切な措置への感謝表明 等
・さまざまな話題を話し合えるしくみづくり
・課題解決に向けたプロジェクトの設置
・懇談会の開催
今回の問題はどこにあるのでしょうか?
Q.部下として本当に期待することはなんだったのでしょうか?
○朝部下より早く来ること
部下やり早く来る上司に期待する行為を書き出してみましょう
○前日思わぬことがあり今朝落ち込んでいる姿を見せない上司
部下の皆さんも落ち込んではいられませんね
上司ならば落ち込んでしまってはならないと考えるのでしょうか
○明日家族旅行なので早く帰る上司
明日朝早くからドライブを予定し、自分だけが運転手かもしれません
明日の旅行の準備がまだで早く帰って支度をしなければならないのかも知れません
ただの言い訳に使ったのかもしれません
上司は部下に明日の予定と今日の定時退社を伝えていたのでしょうか
プレゼンの予定・助言の要請・スケジュールの確保はしていたのでしょうか?
もしこれが仕事の予定であったらどう感じますか。
○「能力のある人は、早く帰るのだ。僕は7時に帰りたいね」
ただいてくれればいいのでしょうか
残業時に一緒にいてくれる間に何を上司に期待しているのでしょうか?
残業が多く負荷がかかっている状況を知ってもらいたいのでしょうか?
仕事上の問題が起こるかもしれないから常に一緒にいて仕事の様子を見ていてほしいのでしょうか?
上司に業務遂行状況の報告と残業の許可を取っているのでしょうか?
仕事を時間内に終わらせるための支援について考えてみましょう。
◇業務の改善 ◇教育への参加 ◇職場での相互支援の在り方についての話し合い
◇上司の助言 など
□日常の職場環境について改善したいことを明らかにしてみましょう
・自ら進んで出来ることは
・みんなで話し合って出来ることは
抱えている問題を知っていると、人は助言したくなるものです
お互いの抱えている問題を共有し、改善策を一緒に考えてみましょう
・上長にお願いしたいことは
◇誰かに責任があるとするのではなく、自分ができることから積極的に取り組りくんでいきましょう!
◇やりにくさを嘆いているより、自分ができることから取り組んでみましょう。
◇常に問題点と改善へのアイディアは、書き出して記録に残しておきましょう。
◇改善策を提案し、上司の意見を踏まえてより良い改善策を上司や職場の仲間と一緒に検討しましょう
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