事例15「セクシュアル・ハラスメント」 

 

私は、夫が亡くなるまでは専業主婦をしていた。夫が亡くなった後、保険金や幾らか貯金があり、当面の生活は困らないが、将来の不安があり働くことを決心。料理好きを生かしたいと思い、職業訓練校に通い調理師免許を取得。近所の弁当屋で調理経験を積んだ後、半年前に現在の会社に入社した。

熱心な栄養士さんがいる社員食堂で、職場には活気がある。チーフのE52歳、男性)は元ホテルレストラン勤務で、技術が素晴らしく、指導も丁寧でした。Eさんとは帰宅時の路線が同じため、帰宅時間が一緒になると、電車内で色々教えてもらうこともあった。たまに、2人で喫茶店でお茶を飲みながら話すということもあった仕事や料理の話がほとんどで、私的な話をすることはなかった。良い職場に就職できて、良い上司に恵まれたと感じていた。

 

ところが、1ヶ月前、Eと一緒に帰った時、Eがふと私のことを「女らしくて好みなんだよなあ」とつぶやいた。冗談だと思い、笑って聞き流し気にしていなかった。先々週、Eから「個人的に付き合いたい」というメールが届いた。今のところは付き合うつもりが無いことを婉曲に伝えるメールを返した。しかし、Eからのアプローチは止まず、頻繁にメールや電話がきたり、帰宅時に誘われることも増えた。

仕事に影響するかも知れないと思い、強くは断れない。最近では、職場でEの顔を見ると恐くなってしまう。

 

Point

 

・職場において望まないこと、とくに男女の問題については「NO」と明確に伝えることが重要です。

・「NO」と知りながら執拗に繰り返す行為はハラスメントになります。 

・自分の素直な気持ちを伝え、相手に気づいてもらいましょう。 

・勝手に相手を「悪者」にすることなく、信頼できる相手として解決を求めましょう。 

 

  取組の視点

 

□職場で起こりがちなケース 

・良好な職場環境の中でも、上司と部下の間での男女のトラブルは起こりやすいようです。 

ちょっと嫌なことがあっても、「これまでの良好な関係を壊したくない」と思ったり、こんなことぐらいで“NO”と言ったら、仕事がやりづらくなるのではと不安がったりしがちなものです。 

・ときに上司が日ごろから高圧的な人物だと、「下手に対応すると何をされるかわかったものではない」と恐怖心まで抱いたりします。 

 

□明確に「NO]と伝えることがまず必要 

・このケースではよき上司から恋愛感情の申し出を受け、遠まわしにではあるが断わりました。それでも食事等の誘いは増える一方。Eへの恐怖心を抱くまでになってしまいました。 

・職場における恋愛感情の申し出に対しては、はっきり「NO」ということが大切です。自分では断ったつもりでも、このケースのように「今のところは」といったように「少しは気があるのだな、それなら押していこう」という気持ちにさせてはいけません。明確に断りの意思表示をすべきなのです。

相手は何とか自分の思いを受け取ってほしい思いでいっぱいなのです。しっかり「NO]と伝えることで、Eさんは理解してくれるはずです。 

もちろん日頃のEさん指導への感謝の気持ちはしっかり伝えたうえで話してみましょう。

Eさんを仕事上で意地悪をする人だと勝手に決め付けず、よい上司のEさんを信頼してみましょう。 

 

□本人に伝えても適切な対応をしてくれなかったら 

・もちろんうまくいかない場合もあります。この場合は、部門長や人事担当者、相談窓口に相談しましょう。きっと良い解決策を示してくれるでしょう。 

・突然上司等に相談する前に、「これ以上繰り返されるならば、相談窓口に相談せざるを得ない気持ちでいる」ことをしっかり上司に意思表示してあげることが相手の立場も大切にすることになるはずです。 

・この場合も、起こったことを記録に取っておき、緊急を要するときはすぐに相談窓口に申し出をし、適切な措置を取ってもらう必要があります。