アクティブ・リスニング  

話し手の言葉の中にある事実と感情をしっかり捉え
話し手の立場になって誠実に話を聴くことを通して
話し手自身が問題を客観的に見据え、問題の本質気に付くことで
話し手自身がその問題を自力解決できるように手助けする技法
 

世の中には話し上手な人はたくさんいますが、聞き上手な人はそう多くありません。相手の話を聞いていても、話を聞き終わらないうちに自分の意見を言い出す人のほうが多いかもしれません。
多くの人が知らず知らずにそのような行動をとってしまいます。
いったいそれはどうしてなのでしょうか。
 

話を聴くのは難しい 

ほとんどの人は、聞くよりも話をするほうが好きなのです。
大勢の前で話をするのは苦手だと言う人も、リラックスできる相手ならば色々な話を聞いてもらいたいと思うのではないでしょうか。
人は、話を聞きたいという欲求よりも話をしたい、聞いてもらいたいという欲求の方が大きいようです。
多くの人が、相手が話をしているときに聞き役に徹することができずに、口をはさんでしまうのではないでしょうか。それは、聞き上手なあり方ではありません。
なぜ、聞き役に徹することができないのでしょうか。
それは、聞くよりも話すほうが心理的に楽だからです。
聞き役に徹したほうが良い場合には、相手がなんらかの問題を抱えていて、相談をされたり、愚痴を聞かされているときなどです。
こういうときに、人の話を聞き続けるのはテレビやラジオなどで話を聞いているのとは違って、相手の気持ちを理解しなければならないという負担がかかります。
だから、話が途中にもかかわらず、相手の気持ちよりも自分の気持ちが先走って、勝手に判断し結論付けて自分の考えを押し付けて、話を終わらせようとしたりするのかもしれません。
 

聴き上手になるために 

話を聴く職業としてカウンセラーという職業があります。
カウンセラーの相手の話を聴く態度は、傾聴あるいはアクティブリスニング(積極的傾聴)と呼ばれています。
 

日本語で「きく」といった場合には、大きく3つの意味があります。
普段使われている「聞く」は英語で言うところの“hear”で、受動的な意味があります。
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つ目は「聴く」、“listen”で耳を傾けるという積極的な意味があります。
もう1つは「訊く」、“ask”で質問するという意味です。
 

聞き上手になるには、2つめの意味の「聴く」という態度が重要なのです。
聞き上手よりも“聴き上手になることを目指しましょう。
 

聴き上手の基本はあいづち 

聴き上手な人は、相手の話をさえぎるようなことは話しません。
聴き上手の発する言葉はあいづちがほとんどです。
「うん」「ええ」「はい」「へぇ」「なるほど」「そうなんだ」といったあいづちを打っていくことで、相手の話のリズムに乗っていきます(ペーシング)。
相手の話したい、聞いてほしい欲求が強ければ強いほど、あいづちだけで会話が進みます。
あいづちは、相手の話を聴いていますよ、理解していますよというサインになります。
ここで大切なのは、相手の目を見てあいづちを打つことです。
相手を見ずにあいづちを打っても、聞いてはいますが、聴いていることにはなりません。
相手は、本当に聞いてくれているのか不安になってしまうのです。
 

そして、「うん」とか「ええ」といったあいづちよりも、少し上級のあいづちに繰り返しというものがあります。
相手の言っていることをそのまま相手に返すというものです。
相手が「大変だったのよ」と言ったら「そっかぁ、大変だったんだね」と返します。
ここで重要なのは、できるだけ相手の言った言葉で返すということです。
「辛かったのね」と言葉を変えて返すと、「大変だったけど、辛くはなかったわ」となってしまうことがあります。

また、相手の言ったこと全てをそっくり返し続けると、相手はバカにされているように感じてしまうので、返す部分を選ばなくてはなりません。
相手の使った言葉で、要点をつかんで短く明確に返すことが大切なポイントです。
正確な繰り返しをもらった話し手は聞き手がちゃんと話を理解してくれているなと感じることができ、話を続けやすくなります。
 

批判しない 

相手の話を聴くということは、アクティブ・リスニングの基本である相手の言っていることを批判せずに受容することです。
相手の言うこと、そしてそこに込められている感情(思い・気持ち)をあるがままに受け入れることです。
これは非常に難しいことです。人の話を聴いていると、どうしても自分の価値基準が働き、評価したり批判したくなってしまう部分が出てきます。
そうならずに、受容的な態度で話を聴くためには、自分の持っている価値観、人生観、相手に持っている感情、知っている相手の性格など、このような批判のもととなるものはまず脇に置いておいて、話を聴かなければなりません。
心をまっさらにして、相手のあるがままの姿を受け止めていくという姿勢です。
そうすることによって、相手の立場に立って「この人はこういうことを言っているのだな、なるほど」という気持ちで聴くことができるようになります。
受容するとは、相手の話に賛成するということとは異なります。
賛成も反対もせずに、相手の言ったままのことやその気持ちを、あるがままに受け入れると言うことです。
 

受容しにくい話 

受容という態度を取ることは難しいことだと言いましたが、比較的簡単な場合もあります。
それは、相手の言っていることが自分と関係ないときです。
例えば、「私、犬が嫌いなんです」と言った場合には、犬を愛している人でない限り、「この人は犬が嫌いなんだなぁ」と受け入れることができると思います。
しかし、それが「私、あなたが嫌いなんです」と言われたら、そう簡単に受け入れられないことでしょう。それは、自分が深く関与しているからです。
しかし、そういった自分が関与しているときほど、受容的な態度で臨むことが必要となってきます。
「そうか私が嫌いなんだ、どうしてだろう」と受け止めてみましょう。
憤慨するのではなく、その原因を相手に質問してみれば、解決策が見つかるかもしれません。
不明なことや疑問に思ったことがあれば、質問して明らかにしてもよいのです。
質問することで、相手自身が問題を正確に掘り下げる手助けとなるのです。
 

「でも」は禁句 

カウンセラーの普段使わない言葉に、「でも」「しかし」といったものがあります。
これは、相手の話、時には相手自身を否定・批判する言葉です。
こういう言葉をかけられると、話し手はそれ以上話しても相手は分かってくれないと感じて止めてしまうか、さらに「でもね」と返し、聞き手を説得しなければと冷静さをなくしてしまいます。
誰も、自分の話している内容を批判する人には話をしたいとは思わないでしょう。
こういった否定する言葉には、相手の思いを変えようとする意思が含まれています。
そして、こういった否定の言葉が出てくるのは、聴き手に聴く余裕がなくなってきたときです。
聴く余裕がないので、相手を変えて話を終わらせようとしてしまうのです。
聴き手の余裕は、その日の健康状態、気分によっても変わるでしょうし、話題によっても変わってくるでしょう。
良い聴き手であるには、自分が今どんな状態にあるのかを把握しておくことはとても重要なことです。
 

受容的な言葉の返し方 

アクティブ・リスニングの基本はあいづちだと言いましたが、あいづちも立派な受容を示す態度の一つです。下手な言葉を返すよりも、きちんとあいづちだけを打っているほうが、よほど受容的に話を聴いているとも言えます。
あいづちだけでも十分なのですが、少し上級な方法として、繰り返しというものがあります。
相手が言ったことをそのままに返すのです。
「どうも
上司の仕事のやり方が気に入らないんです」と言ったら、「あなたは課長のやり口が気に入らないんですね」と返します。
ここで重要なのは、「
上司のことが気に入らないんですね」と内容を曲げてしまわずに、できるだけ相手の言った言葉で返すことです。
要点を得た正確な繰り返しを受けることで、話し手はちゃんと理解して受け止めてもらえていると感じることができます。
アクティブ・リスニングの基本姿勢は、相手の話を受容的に聴くことです。
そしてそれは、相手の話を批判するのでも、賛成するのでもなく、あるがままに受け止める態度です。
 

教えようとしない 

聴いてもらいたくて話をしているのに、いつのまにか相手が自分の経験談を持ち出して、あれやこれやとアドバイスを押し付けられ、ほとんど話を聴いてもらえずに不満を感じた経験はないでしょうか。
人には、話したい・聞いて欲しいという欲求の他に、他人に教えたいという欲求があります。
 

教えたい欲求の強い人は、相談を持ちかけられた時に、相手のためによかれと思って自分の経験などから得た知識や解決方法を「こうすればいいよ」と教えてあげたりします。
本人は相手の役に立つアドバイスを与えることができたと満足しますが、「とにかく聴いてほしい!」と望んでいた相談者には、話を聴いてもらえなかったという不満が残ってしまいます。これでは、良い聴き手であるとは言えません。
時には、この先もっと重要な問題が話されたかもしれないのに、違った方向に浜氏をミスリードしかねないのです。話はしっかり最後まで聴いてあげましょう。
 

アクティブ・リスニングでは、相手に何かを教えようとする姿勢は取りません。
それは、教えようとすると聴き役に徹するという姿勢が失われてしまうからです。
 

話を聴くプロであるカウンセラーはしばしば、「何も教えてくれない」などと批判されることがありますが、良いカウンセラーのように本当に聴き上手な人は、教えようとはしません。
教えることは、多くの場合において無駄だと分かっているからです。
同じような事態で困っているように見えても、多くの見えない点で自分の状況とは異なっています。
自分の場合は上手くことが運んだとしても、それはそのとき限りのことなので、次にも同じような結果が得られるとは限りません。
 

また、教えるという行為は、教える人・教えられる人という上下の関係を作ってしまいます。
話をする人・聴く人というのは対等な関係ですので、それが崩れてしまうとコミュニケーションが上手くいかなくなくなってしまいます。
相手のことを対等な立場で聴いてくれる人だと感じていなくては、なかなか腹を割って話ができないものです。
 

そして、教えるということはこちらが話をする時間になってしまい、相手の話す時間を奪ってしまうことになります。
自分が話している時間は短く、話を聴いている時間は長く感じてしまうものなので、少ししか話していないようでも意外に長く話してしまい、相手は長い話をされているように感じてしまい、うんざりしてしまうのです。話を聴いてもらいたくて行ったのに、時間を横取りされて長話をされたら、相談者に不満が残るのも無理はないでしょう。
 

必要最低限に教える

 

もちろん、常に教えることが良くないというわけではありません。
相手が求めていないことは教えなくてよいということです。
自分の知りたくないことは、教えられてもほとんど覚えることができません。
ですから、「教えてほしい」と言われたとき以外は教えようとしない、また、教えてほしいと言われたこと以外は教えようとしないのが、アクティブ・リスニングの姿勢です。
 

同情しない 

アクティブ・リスニングの基本は、話し手の話す内容を共感的に聴くということです。 

共感とは、相手の感情をあたかも自分自身のものであるかのように感じ、しかもその中に自分の感情を巻き込ませずに感じることをいいます。
この共感をもって話を聴くことによって、話し手は初めて聴き手に本当に自分の抱えている苦しみが理解されたと感じて、心の重荷を下ろして楽になれるのです。
 

共感と混同されがちなものに、同情がありますが、この2つは同じではありません。
共感とは、自分の感情は持ち込まず、相手の身になって考え、相手の気持ちで感じることです。
同情とは、相手の立場で物事を考えるのではなく、自分の立場から考えることをいいます。
そこには、自分の経験や価値観といった枠組みから判断している部分が含まれ、相手を哀れんだり、かわいそうに思ったりという感情が付随します。
さらに、同情はどこか自分が相手に対して優位になっているという雰囲気が漂っています。
それはある種の自己満足です。
自分は相手を理解してあげているという、勘違いともいえます。
結局、同情とは「私はこう思う」というように、主体が聴き手になってしまいます。
 

主体が聴き手になるということは、聴き手が話し手になってしまうという、役割の逆転が起こってしまいます。そうなってしまうと、相手は話す気が失せてしまいます。 

また、同情して自分の気持ちで話を聴いてしまうと、どこかで話し手の気持ちとズレが生じるものです。
それに対し、共感は自分の感情を混ぜずに相手の感情の動きに寄り添っていきますので、「あなたはこう感じている」と主体は話し手になります。
そして、共感は、相手と共に感じると言うことなので、相手と対等で同じ目線で物事を見ることになります。
 

同情はある種の自己満足であり、この自己満足的な聞き方というのは、話し手の気持ちに水を差す結果となってしまいます。
その聞き方の代表は、やたらと「分かる、分かる」を連発することです。
話を聴くプロであるカウンセラーは「分かる」という言葉は用いません。
しかし、みなさん日常会話の中では結構使っているのではないでしょうか。
それは本当に相手の気持ちを理解した「分かる」でしょうか。自分なりに理解したという自己満足の「分かる」ではないでしょうか。
実際には、他人の気持ちを分かってあげるということは、とても難しいことです。
自分が話し手の時に、相手から「分かる、分かる」と言われたら、「そんな簡単に分かるもんか」と反発したくなるのではないでしょうか。
「分かる」という相づちは、結局のところ自分の経験や価値観と照らし合わせて、自分の枠組みから考えたものです。
同じ境遇のように思えても、実際の育成歴や生活環境は大きく異なるので、自分の体験から本当に相手を理解することはできません。「分かる」という言葉は同情が含まれたものなのです。
過去に自分が同じような境遇にいて辛い思いをしていたから、きっとあなたも辛いことでしょう、というのが「分かる」に含まれている意味です。
さらに具体的には、相手がとても苦しい状況にいるときに、「それはとても苦しいでしょう」「とても辛いと思います」と言うのは、同情の意がこもった言い方にとられることがあります。
そして、「とても苦しい状況にいるんですね」「辛く感じられるのですね」と返すことは、相手と同じ目線で話を聴く態度を示すことができます。
 

アクティブ・リスニングのポイントは、話の主体は話し手にあるというところを忘れないことです。 

評価しない 

 

相手の話を評価的に聴いては、聴き手に徹することはできません。
評価というのは個人の価値観が含まれますので、その判断は人それぞれ異なります。
 


また、社会的な倫理観や道徳的観点から見た一般的な評価も、話し手にとってはあまり大きな意味を持ちません。特に、話しにくい悩みなどの相談者には反感を買いかねません。

 

話しにくい相談事には、しばしば倫理や道徳に反する事柄が含まれているからです。

 

相談者自身もそのようなことに気づいており、後ろめたさなどがあるから話にくいのです。
普通の人間関係、特に上司-部下など上下関係で悩みを話しにくいのは、悩みを話すことによって自分がどのような評価を 受けるか不安であるからだともいえます。
そういった不安があるにも関わらず話をしてくれた人に対して、評価をすることは相手から話をする気を奪い、心を閉ざしてしまうことになります。
 


評価には、悪い評価と良い評価があります。

 

悪い評価を受けると、それ以上話したくなくなるというのはよく分かるのではないかと思いますが、良い評価も時には話が続けられなくなることがあります。
それは、話し手に評価に対する構えが出てしまうからです。
良い評価を受けるということは、悪い評価を受ける可能性もあるということを示し、暗に良い内容のことだけを話し、悪い内容は話すなというメッセージを送っていることになり、話し手は実際それに従い聴き手の良い評価が得られる内容だけを話すようになってしまいます。
 


聴き手は相手の話を受容的に聴く必要がありますが、受容することと肯定・賛成するということは異なります。

 

受容するということは、相手の語るままに受け入れるということですが、肯定・賛成するということは結局は良い悪いの評価を、社会的あるいは個人的観点から主観的に判断していることになります。
どちらの評価にしろ、評価的に聴く態度には相手を変えようとする気持ちが含まれ、また、相手の話としてではなく、自分の話として聴いてしまっており、聴き手であるはずの人が徐々に話し手へと移ってしまいます。

 

評価的な態度として、「それは無理だよ」「そこが原因じゃない?」「それいいねぇ」「さすがだね」などといった言語的なものがありまずが、これらの言葉は使わないよう注意しやすいと思います。 


しかし、態度には言語的なもの以外に、非言語的なものもあり、こちらは気づかずに表現してしまうものであり、相手にとっては意外と気づかれやすい部分だといえます。
例えば、悪い内容の話を聴いたときに眉をひそめたり、それまで「うん、うん」と話を聴いていたのに「うーん」とうなったり、良い内容には興味を持ってうなずく、あるいは良い話だけ笑顔で聴くといったことも、話し手にとっては評価となることもあります。
時には、「うん、うん、うん」と返事が早くなったりします。早く終わらないかなとの意思表示かもしれませんね。
 


アクティブ・リスニングとは、相手の話を積極的にそして受容的に聴くあり方です。

 

話し手は聴き手に受け入れられているという体験をすることによってさらに自由に話を進めていくことができます。
聴き手は
中立的な立場で話を聴くということが肝要です。
ちょっと難しいような気もするでしょうが、相手の話の内容を評価することなく同じ態度で聴くという心がけをするだけで、アクティブ・リスニングの実践となるでしょう。

 

ほめようとしない

 

子どもや部下はほめて育てると言われており、ほめることによってモチベーションがあがったり、人間関係を良くすることに役立ったりします。
通常の人間関係では、積極的にほめることは良い効果をもたらすことが多いのですが、相手の話を傾聴するアクティブ・リスニングでは有効でないことがあります。

 

アクティブ・リスニングの態度が必要な場合というのは相手が話をただ聴いてもらいたい、気持ちを受け止めてもらいたいと思っている時です。

 

そういった場合の話の内容は、悩み事などのネガティブなものがほとんどです。
悩み事などで相手が落ち込んでいると、相手のよいところを見つけてほめてあげることによって元気づけたくなってしまうものです。
例えば、仕事が全然うまくいかなくて、自分には続けていく自信がないと持ちかけられたときに、「そんなことないよ。 君は良くやってるよ」と励ましたくなるのではないでしょうか。
時には、このような励ましが功を奏すこともあるでしょうが、ただ話を聴いてもらいたいと望んでいる人にとっては、「ちゃんと聞いてくれない」「真面目に取り合ってくれない」「この人に話してもだめだ」といった聴き手に対する失望につながることもあります。

 

また、話の流れの中で、特定の事柄に対してほめると、特に子どもの場合はほめてもらえる内容だけを話すようになり、本当に話したいことは話せなくなってしまうこともあります。
ほめることも一種の評価ですから、注意が必要です。

 

親-子、教師-生徒、上司-部下といった関係では評価が含まれたほめるという行為によって、上下関係を強め関係の対等性を失うことにもなるでしょう。
そして、ほめるというのは主観的な思いが込められており、主観を持ち込んだ瞬間に、会話の主体が聴き手に移ってしまい、話し手の話を話し手のものとして聴けずに、自分のものとして聴いてしまうことになります。こうなると、話し手は自由に話を続けることができなくなってしまいます。

 

最後に、無理にほめようとして思ってもいないことを言うことは問題外です。
お世辞やおだてなどを言って取り繕っても、全然分かってくれないと反発されるのがおちでしょう。

 

もちろん、最初にも述べたとおり、時と場合によって積極的にほめることが良い効果をもたらすことはたくさんあります。
しかし、相手が自由に話をできるようにし、それをじっくり聴くというアクティブ・リスニングには、積極的にほめようとする態度は必要なく、むしろそれによって相手の話が聴けなくなってしまうということです。

 

アクティブ・リスニングでしっかり話を聴き終わったうえで
その内容を確認してみましょう。
確認した内容に基づき、あなたの見方・考え方を提供し、
問題への見方、解決への道筋を広げてあげることができれば、
きっと話し手は、よりよい問題解決への道筋を自分自身で選ぶことができるでしょう。
 

 

 

 

<参考> 話を聴くときの5つの応答 

 

話を聴くときの応答には「事柄への応答」「感情への応答」「意味への応答」「要約」「質問」の5つがあります。 

 

□事柄への応答

 

「内容への再陳述」「繰り返し」「言い換え」などともいわれます。 

話し手の話の内容を、キーポイントを押さえて正確かつ簡潔に伝え返すことです。 

応答により、話し手の発言に対して、聴き手が注目して聴き、その内容を把握していることを伝えるとともに、聴き手の理解をチェックしたり確認することができるのです。 

個の応答により、話し手の考えを整理し具体化するのを助け、また、聴き手と話してとの関係をより良いものとします。 

 

□感情への応答

 

感情への応答は、話し手の感情的な表現(言語化されていたり、言語化されていなかったりします)を注意深く聴き取り、それを伝え返す技法で、話し手が経験している内的世界を聴き手が理解しているということを示します。 

感情への応答によって、話し手は「聴き手に自分の気持ちがわかってもらえた」という安心感を持つことができますし、また、話し手が自分自身の感情に気づくのを助けることができるのです。 

感情を応答するときは、感情だけではなくその感情を生み出す事柄も添えて返してあげてください。 

 

□意味への応答

 

意味への応答は、話し手の話の中の事柄と感情の結びつきを聴き手が明確にし、それを話し手に伝え返すことです。話し手が述べる事柄は、多くの場合、話し手の感情が関係しており、お互いを結びつけることによって、話の意味を明らかにすることができるのです。 

これを伝えることによって聴き手が話し手を深いところまで理解していることを示すことができます。

 感情の言葉を表現するだけではなく、その感情と関係する経験・状況・理由などの事柄を関連付けて応答しましょう。 

 

□要約

 

話し手の話がひと段落したら、話の趣旨をまとめて伝え返すことで、これまでの話の「事柄への応答」あるいは「意味への応答」を整理し伝えるものです。 

要約は、話し手の話の中から重要なテーマを系統だてて統合することであり、話し手が自分の考えをまとめたり、あるいは見直すのを援助し、話し手が自分のテーマをより深く探索するのを促進します。 

話し手の表面的表現だけではなく、本当に言いたいことが何かという点に集中して感じ取ることが大切です。 

要約のタイミングは、○話がとりとめもなく、混乱しているとき、○話に方向付けと一貫性を与える必要があるとき、○話の段階を次の段階へ移行さえたいとき、○ひと段落ついた話をまとめるときなどです。 

 

□質問

 

質問は、単に聴き手が情報を得るためというよりも、話し手が問題を正確に掘り下げることを援助するために使われます。 

質問は、事柄や感情への応答を行う前に、不明な点を明らかにしたり、感情がどのようにして生じたかを確認するために行われます。 

質問は聴き手が話し手に関心を持っていることをしまします。 

質問は、話し手が自分の感情をより深く表現することを助けます。 

質問は、話し手が話そうか迷っているときや、話題を整理し方向付けするときにも使われます。 

ただし、話し手を追及したり、誘導するようなことは避けなければなりません。