構成詩【家族に優しい企業】(文責:黒永敬)

 

 

 

 

ナレーター

 

 

今後、日本社会は  

ますます 少子高齢化や 核家族化が進みますが、

そのような中で 女性も男性も 

ともに安心して 仕事と 育児・介護に対する責任を 

両立できているのでしょうか。

私達の職場を振り返って見ても、まだまだ充分とは

言えない状況に あるような気がします。

 

これから紹介する構成詩は、

育児、介護を テーマとしております。

理想論だとお考えになる方、

そして「なるほどな」と 納得していただける方など

様々な思いを持たれるでしょうが、

変化している 現在の社会状況や

ライフスタイルを踏まえた上での 内容となっています。

 

現在の社会制度、行政等の取組み、

企業における 社会責任などを含めた上で

仕事の進め方、支援システムについて 考えてみましょう。

 

ここは、ある職場です。

育児休職中の女性社員、加藤さんが

午後、職場を訪れ 上司の山本さんと話をしています。

 

 

女性社員

加藤

 

 

山本さん、休職中は何かとご配慮頂き 有り難うございます。

今日は、復職の件について 相談したいと思い、

伺いました。

 

 

上司 山本

 

 

加藤さんの休職中は、

職場の皆さんの協力で 仕事は順調にいっています。

 

日頃から 加藤さんが頑張ってくれていたからね。

加藤さんが戻ってきてくれるのを

みんな 待っていますよ。

 

 

女性社員

加藤

 

 

本当にありがとうございます。

復職の日を 7月22日でお願いしてありますが、

それでよろしいでしょうか。

お蔭様で、心配していた保育園も ようやく見つかりましたし。

復職後は 育児時間を利用させていただく事と なりますが

どうぞよろしくお願いします。

 

 

上司 山本

 

 

はい、分かりました。

 

でも 保育園が見つかって 本当に良かったですね。

加藤さん 実は 今後の大きな業務の流れとして

9月に監査が予定されています。

加藤さんを中心に

監査対応業務を 実施するように お願いします。

 

 

ナレーター

 

 

加藤さんが復職する日が 決まりました。

職場では、加藤さんを中心に 監査対応業務を円滑に

遂行できる事を望んでいます。

 

加藤さんは 2年間の育児休職中、子供とも触れ合い

夫とも今後の事について 話し合う時間が持てました。

 

また、出産によって変化を生じた母体も

充分休養できた事に対し、

職場の皆さんには 大変感謝していました。

しかし、加藤さんは 保育園が決定するまでの間、

不安で一杯だったのです。

 

復職前夜、加藤さんのお宅での パートナーとの会話です。

 

 

加藤の夫

 

 

明日から、頑張ろうな。

育児や家事は できるだけ協力するよ。

 

保育園の送り迎えや 病気の看病とか

お互いの職場の状況を考えて

話し合って決めていこうよ。

 

 

女性社員

加藤

 

 

ありがとう。

この保育園に決まるまで、

本当に 仕事と育児が両立できるのか 心配して 悩んだわ。

だから 1年待って駅に近い希望の所に決まって

あなたにも 少しでも負担をかけずにすんで

本当によかったわ。

 

認可保育園の場合、

2才までの子どもを保育する先生は

一人の先生に 子ども5人しか、みてもらえないから

 

なかなか空きがないし、

まして、駅の近くとなると 大変厳しい状況よね。

 

 

ナレーター

 

 

加藤さんは、保育園の関係で 悩んだ時、

保育園の空きを待っている 待機児への解消策として 

国や企業が 積極的に事業展開を行い、

働きやすい職場環境が 実現できればいいなと思っていました。

 

育児休職が取得できても、

働き続けることができなければ

有効な制度とは言えないでしょう。

 

保育園の運営に 企業が参加したり、

職場内の保育園を設置する 企業もあるようです。

 

そしてまた、保育士、看護師の有資格者で、

働く夫婦の子供を 自宅で預かる「保育ママ」を制度化し、

支援している 地方自治体もあるといいます。

 

加藤さんは、今後の大きな課題として、

企業内保育所設置への 働きかけを行うためには、

自分がどのような行動を示し、

取り組むべきなのかを 考えるのでした。

 

 

加藤の夫

 

 

以前、新聞に載っていたけど

日本郵船は 丸の内の本社内に 保育所を開いたそうだね。

 

霞ヶ関の官庁街には

文部科学省 共済組合の  「霞ヶ関保育室」 もあるそうだし、

残業が多い仕事柄、職場保育所は 大きな味方になるよなぁ。

俺の会社は無理だしなぁ。

 

 

女性社員

加藤

 

 

いいわよね。

私の会社には まだないから残念だわ。

 

私は育児時間を利用するけど

業務をきちんとこなし、

働いている自覚を しっかり持って

今まで以上に 頑張らなくては。

 

職場の皆には迷惑をかけてしまうけど

仕事に対する責任を果たす事が一番よね。

 

 

加藤

(影の声)

 

 

夜間保育が 受け入れてもらえなかったから、

もし残業になったら どうしよう。

夫は 協力してくれるのかなぁ。

 

 

ナレーター

 

 

女性が職場で働くためには

家庭での パートナーとの協力体制は 欠かせないのです。

夫も妻も それぞれ仕事を持ち、

その責任を果たすことを 期待されています。

 

今、日本の社会では

これまでの男性中心であった 社会の仕組みや風土、

行動様式をはじめ 社会生活における あらゆる場面で、

性別による固定的価値観を 払拭し、

男女が 共同して社会運営に参画する 社会の実現への

取り組みがなされています。

 

同じ様に家族への共同責任も

夫婦がお互いの立場を理解しながら

協力する事で実現できるのです。

さて、職場での昼休みの会話です。

 

 

女性先輩

高橋

 

 

隣の職場の中西さん、

先日 お母さんが 入院されたらしいわよ。

他人事ではないわよね。

 

 

男性同僚

田中

 

 

そうなんですか。心配ですね。

看病となると大変ですよね。

 

 

女性同僚

鈴木

 

 

本当に大変だと思うわ。

でも確か、介護も育児と同じ様に 休職制度がありますよね。

 

 

女性先輩

高橋

 

 

ええ、あるわよ。

 

介護休職制度についても

少子化や高齢化が進む日本では 身近な問題よね。

 

私も家族が倒れた時、

看病の為、有給休暇を取らせてもらったけど、

今後は 看護休暇も 制度に取り入れられればいいわね。

 

 

女性同僚

鈴木

 

 

そうですよね。

子どもの看護、親の介護は

絶対に自分の身に降り掛かる事ですものね。

 

病気休暇と同様に看護休暇の制度があったら

助かりますよね。

 

女性先輩

高橋

 

 

厚生労働省が 「ファミリー・フレンドリー企業表彰」を

実施しているでしょ。 知ってます?

ファミリー・フレンドリー企業って

仕事と育児、介護とが両立できるような

いろいろな制度があるのよね。

 

例えば 事業所内保育施設があったり

育児や介護休業制度も 男性が利用しやすい雰囲気であったり、

労働者自身が 柔軟な働き方を選択できるような

取り組みを行っている 企業の事よね。

 

その中で 看護休暇を取り入れている企業も

表彰の理由としていたわよ。

 

 

女性同僚

鈴木

 

 

私も新聞で読んだ事あります。

確か、介護のときは 援助金があったり

夜間・延長保育料や 介護サービス費用の

補助もあるそうですね。

 

育児休職では 男性の利用がある 

企業が表彰されるそうですね。

 

 

男性同僚

田中

 

 

そうですか。

表彰された企業は男性にも

育児休職を利用しやすい 職場の雰囲気なんでしょうね。

東京ガスも是非、

ファミリー・フレンドリー企業の仲間に入って欲しいなぁ。

 

うちの会社でも、一人 育児休職を利用し

職場復帰している男性がいるそうですよ。

 

男性第一号ですね。

ファミリー・フレンドリー企業に表彰されると

もっと利用しやすくなるだろうし、

働きやすくなるだろうなぁ。

 

でも介護については中西さんは男性だから、

お母さんの介護となると

仕事との両立は本当に大変だと思うよ。

 

 

女性同僚

鈴木

 

 

両立のためにも 中西さんのパートナーの協力が

不可欠ですよね

 

 

ナレーター

 

 

企業で働く私達の職場において

仕事と育児そして介護という 大きなハードルがあります。

 

企業が今後、少子高齢化の中で

継続就業支援と育児介護など、

生活と仕事との両立支援の整備を 同時に行わないと、

日本の将来を支える大切な役割を担う 社会の構成員への

出生率が低下してしまう 大きな要因につながると

考えられているのです。

 

そして、男女問わず 社会的役割と家庭での役割を

夫婦で協力しながら果たしていく事が 求められています。

 

さて、朝のミーティングが始まりました。

 

 

上司 山本

 

 

以前よりお知らせしていた 監査が来週から入ります。

日々の業務を もう一度見直しチェックして下さい。

よろしくお願いします。

 

 

ナレーター

 

 

加藤さんを中心に 監査対応業務が遂行されています。

育児時間を利用できない時もあるため パートナーと協力し

保育園の送り迎え、家事をこなしている状況が 続いています。

 

 

加藤

(陰の声)

 

 

今日も迎えをお願いしたけど 大丈夫かしら。

急に迎えに行けないという連絡が入ったら

どう対応すればいいかなぁ。

 

 

ナレーター

 

 

加藤さんは 仕事に対する責任を 精一杯果たすため、

家庭との両立に対し 問題に直面しながらも

工夫を凝らし 頑張って対応しています。

加藤さんのお宅での 夕食の場面です。

TVで“ピピッとコンロ”のCMが 放映されています。

 

 

女性社員

加藤

 

 

このCMって 夫婦が一緒に夕食の準備をしているでしょ。

一緒に帰宅して 家事育児の分担ができればいいなぁ。

 

監査が無事に終われば、 今までの様に 育児時間を利用して

帰宅できると思うけど、あなたが帰ってくる間、

子供をみながら 夕食を作っているでしょ。

 

例えばこれから、あなたが子供をみて、

私が夕食の支度をするという様に 分担してくれれば助かるわ。

 

ナレーター

 

 

夕食の支度など、家事をこなす時、

時には 子どもが動き回って 危ない場合や、

泣いて愚図っているなど 様々な状況があります。

 

その中で 子どもをみながらの家事は

負担が大きいため、あらゆる面で工夫が 必要とされます。

 

皆さんは、家庭内における 夫婦の役割分担について

考えた事がありますか。

 

 

加藤

(夫)

 

 

この“ピピッとコンロ”のCMは

コンロの多様な機能もよく分かるけど

夫婦で 一緒に食事を作るという事については

これからの社会状況に 合っているよなぁ。

 

そう言えば、以前、

新聞で 富士ゼロックスに勤務している 男性社員が

二人目の子供の時に 育児休職を取ったって 読んだ事あるよ。

 

「入社以来、初めて自分を見つめ直す時間も持てたし、

一人目の時は 全て任せっきりだったから

自分に負い目もあったけど、

 

二人目の時は 妻と協力して育児をしたという

実感が持てて良かったよ」 って書いてあったな。

 

俺も、出来る限り早く帰宅して 手伝うからさ。

二人の子供なんだから

育児、家事も 二人で協力しながらやろうな。

 

 

加藤

(陰の声)

 

 

この気持ちが、ずーっと続いてくれれば、嬉しいんだけど。

でも、「手伝うから」の一言で 随分と救われるわ。

 

 

ナレーター

 

 

男女に関わりなく 仕事に対しても、

家庭内においても 男女共同で役割をこなす時代です。

 

夫婦ともに 仕事も家庭も協力し合って心にゆとりのある、

豊かな生活を営む事は、

育っていく子供にも 素晴らしい環境となります。

 

 

加藤

(陰の声)

 

 

監査という責任ある業務を任せられ、

職場も認めてくれていて、妻も良く頑張っているのだから 

出来る限り 協力をしよう。

 

ナレーター

 

 

女性が 責任ある業務を任せられ

認められたいと思う気持ちを 理解し、

女性が 充分に力を発揮する事ができるため、

職場のみなさんの支援は

会社にとっても 大変重要な取組みなのです。

 

さて、再び監査を翌日に控えた 加藤さん宅での会話です。

 

 

女性社員

加藤

 

 

明日も保育園のお迎え お願いしますね。

明日で監査が終わるけど、

もし指摘事項があったら 業務改善で

また当分の間、迎えは無理になるかもしれないわ…。

 

 

加藤

(夫)

 

 

僕のほうは 何とかなりそうだから 心配するなよ。

 

でも、今日、迎えに行った時の事なんだけど。

たかしが昼寝の後、少し熱があった様だと 先生が言っていたよ。

連絡帳に書いてあるはずだけど。

 

 

女性社員

加藤

 

 

ええ、さっき、連絡帳を見て

返事を書いておいたわ。

 

もう、寝ているけど、

まだ熱がありそうだから…、

 

どうしよう。

明日は監査だから 絶対に休めないし…。

 

 

ナレーター

 

 

熱がまだあるからでしょうか。

加藤さんが帰宅した時には、子どもはもう、寝ていました。

 

 

加藤

(影の声)

 

 

たかしの寝顔を見て 少し安心したわ。

たかし、ママも一緒にいたいけど…。

ごめんね。

ママ お仕事、頑張るからね

 

 

ナレーター

 

 

加藤さんは、明日の監査業務の責任を 果たすために、

お母さんに 子どもをみてもらう様、連絡を取りました。

 

育児時間という制度を 利用したくても、

職場環境・職場状況によっては

利用しにくい、利用できない場合も 発生してきます。

 

さて、加藤さんは家庭を守りそして、

企業内での活躍に対する 新たな価値観に 気づき始めました。

気づくことにより 精神的余裕も生まれてきました。

 

 

加藤

(影の声)

佐藤

 

今、私は家族の一員として、

企業の一員として 重要な責任を果たしている。

 

それに対し自分自身が 自覚と誇りを持ち、

達成感を得られることこそが 大切な事なんだ。

 

 

ナレーター

 

 

自分達が生きていく上での、一つ一つの場面の中で

責任を持ち、精一杯自分の役割を果たす。

その努力が仕事を通して 

社会に貢献する 大きな力となります。

 

再び、職場での様子です。

 

 

上司 山本

 

 

皆さん、監査は無事に終了しました。

ご苦労さまでした。

 

監査結果については

改善、検討内容もなく

 

今までどおりに 確実な業務を遂行して下さい。

という評価を得られ、大きな指摘事項も有りませんでした。

 

お疲れ様でした。

今後もみんなで協力し合い、

お互いにフォローし合って行きましょう。

 

 

女性 先輩

高橋

 

 

そうですね。

皆さんがそれぞれ、

様々な家庭の状況や立場を 抱えながらも

みんなで協力し合い 

監査を乗り越える事ができたのは、

お互いを理解し 感謝の気持ちを忘れずに いたからですね。

 

女性同僚

鈴木

 

 

私もこれから結婚、出産、育児と経験すると思うけど

仕事と家庭の両立は しっかりやりたいと思います。

勿論、パートナーになる人には 協力してもらわないと。

 

将来のパートナーに 夫婦が協力して 育児にあたる事は

日本社会の将来を支える 大切なことだと言う事を

まず第一に 話そうと思います。

 

 

女性社員

加藤

 

 

私も監査を任され、責任をもって 

業務をこなす事が出来たのは

皆さんの協力があったからです。

 

有り難うございました。

 

 

ナレーター

 

 

子どもを産み育てることは

家族にとって とても大切な事ばかりでなく、

日本社会にとっても 次世代を担う若者を 育てるという

大切な営みなのです。

 

少子高齢化社会の中では 企業で働く誰もが

育児にかかわり、そして次に

介護という 大きな壁にぶつかります。

 

このような時代背景の中、

企業内においても 社会的責任を果たす為、

具体的な取組みをしている企業が

市場から選ばれているのです。

 

 

また、積極的に取り組みを行っている企業に

大きな投資がなされ、

その企業の商品やサービスが 選ばれる時代が来ているのです。

 

 

女性も男性も 安心して諸制度を利用し、

仕事の責任と家庭の責任が 両立できるよう

これまでの 男女の固定的役割意識を見つめ直し、

男女がともに責任を果たせる 社会の実現に向け

具体的に行動するとともに、

制度面や意識面からの 支援体制を

更に充実していく事が 社会、職場

そして働く人々すべてに 求められています。

 

 

さて、皆さん、どうでしたか?

今はまだ理想論かもしれません。

しかし、社会は大きく変化しています。

 

男女共同参画社会の実現は

私たちの将来を支える 大きな取り組みなのです。

 

誰もが活き活きと 働らき続ける職場環境こそが、

企業の発展をもたらす 大きな力となることを

しっかり認識しなければならないと、私達は考えます。