企業価値評価に新たな方向性[2008年]

 SAM社・ダウジョーンズのSRIインデックス 

 

売上高や利益、キャッシュフローなど財務的側面のみで判断されていた企業価値の尺度 

(1)社会的(2)環境的(3)財務的 

の三つの側面を総合的に見るトリプルボトムラインの評価軸へと拡大しつつある。 

 

こうした評価軸を取り入れたSRI(社会的責任投資)の概念も世界中に広がりつつある中で、スイスのサスティナブル・アセット・マネジメント(SAM)社と米・ダウジョーンズ社が共同で開発したSRIインデックス(DJSI)に損保ジャパンが8年連続で組み込まれている。 

 

また今年、SAM社が行う企業の持続可能性関連活動に関する評価において、同社は銀賞を受賞した。企業価値評価の新たな方向性を示すものとして、国際的にも注目が高まっている。 

 

調査会社イノベスト社は、企業価値の評価に関し、企業の本質的なリスクの特性と潜在的な競争力について、財務資本(有形資産)で把握できる企業価値は氷山の一角にすぎないとし、投資家にとってのリスク、収益機会、競争の利潤をもたらし得るのは、従来十分把握できていなかった無形資産価値の部分であると提言している。 

 

無形資産価値は、大きく分けて 

■ ステークホルダー資本 

■ 持続可能なガバナンス 

■ 人的資本 

■ 環境価値 

という四つの価値を基に詳細なテーマを挙げている。 

 

これまで財務面だけで判断されてきた企業価値に、コンプライアンスや人権などの社会的側面グリーン調達や省エネなど環境的側面を加えた三つの視点で判断するトリプルボトムラインが今後の流れにあるという。 

 

スイスの資産運用アドバイス会社「サスティナブル・アセット・マネジメント」(SAM)社はこの三つの指標で企業の持続可能性を調査する「SAM社コーポレート・サスティナビリティ・アセスメント」を1999から実施。

 

ダウジョーンズ社と共同で開発したSRIインデックス(社会的責任投資株式指数=DJSIは、その調査結果に基づいて経済的側面、環境的側面、社会的側面の三つの視点から先進的取り組みを行っている世界の318社をDJSI銘柄として抽出したもので、DJSIはライセンス契約に基づく運用資産残高が20078月末時点で約6400億円(約56億ドル)に上り、現在、世界で最もメジャーなSRIインデックスとして知られている。

 

SAM社の評価軸は、 

世界規模のビジネストレンドや課題に関してビジネス機会の掌握ならびにリスクマネジメントで同業他社よりも先行しているか 

○市場に対して魅力的な投資機会を提供しているか 

という2点のほか、全業種共通項目として 

  リスク・危機管理、法令順守など経済的側面 

  環境効率性など環境的側面 

  企業としての社会性など社会的側面 

という三つのポイントで評価している。 

 

例えば 

経済的側面としてはカスタマーリレーションマネジメントブランドマネジメント 

環境的側面としては先進的環境パフォーマンスなど 

社会的側面としては人材けん引力など 

が問われている。

 

SRIは、もともとギャンブル関連企業などを投資対象から除外するネガティブスクリーニングから始まり、優れた取り組みを行っている企業を選ぶポジティブスクリーニングへと進化してきた。

 

その中で、社会的信条を貫く投資スタイルから、リスクや成長性などに着目する投資スタイルへと変化してきている。 

 

欧州では政策的手法でSRIの拡大を図っており、例えば英国では2000改正年金法を発効し、投資先企業の決定において社会・環境、倫理的側面の評価を考慮に入れているかどうかを公表する義務を年金基金に課すなど、政策面でもSRIを後押ししてきた。

 

最近では、投資家の選択肢を広げる多様なSRI商品が登場して、環境に配慮しながら世の中を変えようとする投資家だけでなく、そのリターンに着目してSRIファンドに投資する投資家も出てきており、SRIは新たな広がりをみせている。

 

持続可能な発展における金融機関の役割への期待がますます重要視されるなか、 

こうした評価軸やインデックスの浸透がますますその流れを加速するであろう」とみられている。