職場や家庭・地域社会で『ちょっと気になる事例』研修って何?
[研修の狙い]
この研修は、私たちの日常生活の中から『ちょっと気になる事例』を研修参加者が出し合って、その事例について話し合う研修です。
話し合いの中では、問題の本質を探り、問題を引き起こす背景やそこに潜む予断・偏見や私たちの意識について気づき、そのような事象が再び起りにくい職場や家庭・地域社会とするための仕組みづくりや、もっと素晴らしい人間関係を築くためのアイディアを出し合います。
だれもが元気で活躍できる職場、誰もが自分らしく生活できる社会を実現するために、私たちが何をなすべきかをみんなで考え、そのイメージを膨らませるのです。
そこで出し合ったアイディアを職場に持ち帰り、各人の建設的な行動を足がかりとして、みんなが生き生きと働ける『元気の出る職場』の創造への具体的な行動力が身に付きます。
[研修の準備]
1.職場や家庭・地域社会における『ちょっと気になる事例』の収集
○研修の開催に先立ち、参加者から、自分たちが生活している職場や家庭・地域社会における『ちょっと気になること』を事前に提供してもらいます。
○情報提供は、所定の報告用紙に基づき、社便かメール、FAXにて行います。
○研修の目的以外に使用しないことを約束します。
○情報提供は、記名を原則とします。
(問題提起の内容確認や提供者の疑問に対する事務局からの回答の必要性を配慮)
なお、提供者が無記名を希望する時は、無記名も可とします。
2.事例集の作成
○提供された事例をテーマごとに分類し、『ちょっと気になる事例』集(以下事例集という)を作成します。
○作成にあたっては、関係者、関係職場が具体的に分かる内容は、記号化するなど十分な配慮を行います。
○同様の内容があっても、まとめることなく、併記します。
(まとめる場合には、同様の事例提供が何件あったかを必ず記述)
○事例集を参加者分コピーします。(研修開催日の最大公約数と講師用をコピー)
3.人権啓発担当者の事前学習
○人権啓発担当者は、提供された事例を一読し、その内容について事前学習を行うとともに、自分の考え方を整理しておきます。
この考え方は、押し付けるために用意するのではなく、いろいろな意見がある中の一つとして「私の意見」として準備しておくことが大切です。
(事前学習の内容は、[研修の進め方]を参照)
[研修の進め方]
1.研修目的の徹底
○研修の狙いを参加者に徹底します。
☆私たちの身の回りで起っている事象を、人権尊重の視点で見つめ直し、問題の本質を捉えるとともに、もっと素晴らしい人間関係を創造するために、私たち自身が何をなすべきかを話し合い、自らの行動する勇気と実践力をお互いに育む場とします。
○話し合い研修のルールを説明します。
☆自分の思いを素直に伝え、相手の思いを良く聴くこと。
☆予断や偏見、差別的見方であっても、自由に発言できる場とすること。
ただし、予断や偏見をそのまま持ち帰らないために、みんなで十分な議論をします。
☆話し合った考え方、取るべき行動等は研修の場の外に持ち出しても良いが、だれが発言したか、何処の職場で起ったかなど、個人・職場が特定できる情報は一切持ち出さないルールとします。
なお、啓発担当者が発言したことは、持ち出し自由とします。
2.事例研修の展開
(1)事前学習
人権の視点から問題を見抜き、問題を引き起こしている背景や、そこに潜むや談や偏見に気づくためのトレーニングとして、人権啓発用VTRや新聞記事等を活用し、「人権とは何か」「差別とは何か」について、啓発担当者を交えての全員での話し合いを行います。
・VTRの活用
「くらしの中にひそむ偏見」(東京人権啓発企業連絡会制作)
「身近な話題から人権問題を考える」(東京人権啓発企業連絡会制作)
「青い目、茶色い目」(NHK放映)など
・新聞記事等の活用
最近の新聞記事等を事前準備し活用します。
◆新聞記事は著作権の関係があり、新聞社に記事コピー使用の了解を取る(通常1記事5000円)か、事前に記事内容を要約して情報提供すること
◆雑誌等は、コピー使用について事前了解をとり情報提供すること
なお、読売ウイークリィ(読売新聞社発刊)と労政時報については、了解なしに使用可(確認済み)
・社会的に取り組まれている人権に関わる問題
・人権問題に取り組み始める契機となった事象
(2)個人作業
参加者が提供しあった『ちょっと気になる事例』集を一人一人は一読します。
・参加者相互が何を『気になる事例』としているかを知る。
・何気なく見逃していた事象に気づく。
・同様なことが自分の身の回りにも起っていることに気づく。
・問題かもしれないが、我慢してその解消に取り組めないで入る自分に気づく。
・他者が気になることが、なぜ問題なのかに疑問を抱く。
(3)グループディスカッション
①グループ分け
○グループ分けは、1グループ6~8人とします。
(それ以上の多人数となると話し合いに参加しない人が出てきやすい)
○職場はできるだけ異なるメンバーの構成とします。
(異なる見方・価値観からの意見が出ることが期待できます)
(普段から親しい関係にあることで真剣な議論が出難い場合もあります)
②話合いの具体的な進め方
○各人の体験や知識、その時の思いなどを出し合い、『ちょっと気になる事例』について、以下の内容を自由に話し合います。
<問題の把握>
Q.なにが問題なのか?なにが起ったか?
Q.なぜ問題なのか?
・人間の尊厳に関わるのか?・差別的な取扱を受けたのか?・不快に感じたのか?
Q.行為者は、どのような思いでその言動を行ったのか?
・伝えたかった本当の目的は何か?・どうしてこのような行動を選択したのか?
Q.相手は、どのような思いでその言動を受け取ったのだろうか?
・相手の心の動きとその影響はどうだろうか?
Q.そのような言動を引き起こす背景は何だろうか?
・固定的観念 ・予断と偏見 ・力関係 ・世間体 ・社会の常識
Q.そのような言動が許されるのは、なぜだろうか?
・肩書きや立場に違いによる力関係 ・人権意識 ・価値観の違い ・相手への無関心
Q.なぜ、相手は、そのような言動に対して抗議をしなかったのか?
・力関係 ・行き過ぎた配慮 ・抗議に対するリアクションへの恐れ ・相手への気遣い
<自らの意識の中にひそむ偏見や差別意識への気づき>
Q.自分自身の意識や行動の中に、
予断や偏見、差別意識につながるものはないだろうか?
Q.気づかずに人を傷つけていたことはないだろうか?
Q.問題がある事実すら全く気づかなかったことはないだろうか?
・事実を知ることの大切さ・「愛」と「無関心」
Q.自分の周りに気に掛ることはあったが、無関心でいたことはなかっただろうか?
Q.なぜ、その問題を解消するための行動を取らなかったのだろうか?
・この事象に、私が直面したらどのような行動を取っただろうか?
・行動を起こさなかったとしたら、その原因は何か。
・当事者が何も抗議しないのに、わざわざ自分がすることはない。
・自分だって我慢しているのだから、そのぐらいは我慢できるはずだ。
・そんなことを言っていたらきりがない。
・長いものに巻かれろだよ。
Q.私が、同じような状況に立ったら、同様な言動を行うことはないだろうか?
・このような事例が起りやすい原因を探る。
<問題解決に向けた課題の設定>
Q.問題の本質は何処にあるのか?
○仕事の進め方、職場の風土、固定的な役割意識
○パートナー意識、力関係を背景とした高圧的な態度
○的確な部下育成能力、部下育成意欲
○社会風土、世間体
○人間関係力、お互いを大切に思う心
○人権問題への正しい知識と理解
○人権意識と行動力
Q.問題解決をするためには、具体的に何をしたら良いか?
○同様な事例が起りにくくするための効果的な取組み
・職場風土・仕事の進め方の見直し
・正しい知識の習得と日常化
・人権啓発・研修の計画的・継続的な実施
・人権の視点に立った職場マネジメント
・職場における人権文化の創造
<人権啓発担当者の役割>
○グループディスカッションを見守りながら、話合いの方向性と問題の掘り下げについて、適宜助言を行います。
○意見を述べることも必要だが、押し付けにならないよう配慮します。
○会社の立場、担当者の立場、個人の立場かを明らかにすることも大切です。
○世界に動き、社会にニーズ、問題理解のための正しい知識を適宜提供します。
○ディスカッションの方向性は参加者自らで探り当てていくよう適宜指導します。
<ディスカッションのまとめ>
○グループディスカッションを終わっての感想をお互いに話し合います。
<発表>
○発表は、実施する方法と実施しないで終わる方法があります。
■発表する場合
発表するメリット |
発表するデメリット |
・他グループで話し合った内容が確認でき、自グループの話合いの内容に自信を得たり、異なる見方に気づく。 ・自分たちの人権尊重への取組み決意を改めて表明する効果がある。 |
・まとめのための話合いになる傾向があり、問題の本質を探るまでにいたらないことがある。 |
■発表しない場合
発表しないメリット |
発表しないデメリット |
・時間的余裕ができる。 ・まとめのための意見集約とはならず、話合いが活発にできる。 ・問題把握のためのいろいろな考え方や体験談が交わされる。 |
・発表がないために、話合いの内容が散漫になる場合がある。 |
<まとめ>
○担当者として、みんなに大切にしてもらいたいことを伝えます。
○一人ひとりが大切にしようと思うものを思い描き、その思いを一つひとつ日常生活の中で実践していくことの重要性と素晴らしさを伝えます。
この場合、自らの体験談や社内での実践事例を示しながら伝えると効果的です。
○研修でともに学んだ「人権尊重」の意識を職場や家庭に持ち帰り、日常の生活の中に活かすことが大切であることを訴えます。
○家族や職場の仲間と「人権」について話し合うことも重要であることを伝えます。
以上
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