免疫力の役割を知ろう

 

 

 

免疫とは、ひとことでいえば病気などから体を守る抵抗力のことです。免疫は大切なものだということは、殆どの方がご存知でしょう。

 

しかし、具体的な働きを知っている人はあまりいません。最近、体内での免疫に仕組みが明らかになるにつれ、再び免疫の重要性が注目されています。

 

 

 

【免疫の仕組み】

 

 

 

免疫力の低下で起こる病気は感染症だけではない

 

 

 

免疫とは、病気などから体を守る抵抗力であり、自然治癒力の主役です。

 

例えば、家庭や職場などですぐ風邪を抱える人と、かからない人がいます。また風邪にかかった後、すぐ回復する人と、いつまでも症状が長引いている人がいます。

 

こうした現象は、主に免疫力の違いによるものです。免疫システムが正常に機能していると、体内に侵入してきた細菌やウイルスなどを速やかに退治し、排除できます。

 

しかし、免疫力が低下すると、風邪やインフルエンザ、結核などの感染症にかかりやすくなるだけでなく、症状が長引いてしまいます。

 

また免疫機能が正しく機能しないと、食べ物、花粉、ほこりなど、本来は体にとって害にならないものを敵とみなし、免疫システムが過剰に反応することがあります。これがいわゆるアレルギー症状です。

 

また、リウマチなど膠原病も免疫機能の異常による病気です。他にも人間の体内では一定の頻度でがん細胞が発生していますが、これらも免疫力によって破壊されます。

 

しかし、免疫力が低下していると、排除できないがん細胞がどんどん増殖してしまう危険性があります。また、エイズ(後天性免疫不全症候群)は、エイズウイルス(HIV)が白血球を破壊し、免疫力が低下する病気です。

 

 

 

免疫は病気の予防にも活用されている

 

 

 

私たちの体には、免疫という特定の器官はありません。骨髄、胸腺、脾臓、リンパ節、扁桃、血管、皮膚、腸管などの器官や組織が協力しあって、免疫のシステムを構成しています。

 

 

 

免疫の大きな働きは、主に3つあります。

 

1・細菌やウイルスなどが体内に侵入すると異物と認識する。

 

2・体内に侵入した異物を外敵と認識して抗体(武器)を作り、記憶する。

 

3・外敵と認識された異物(抗原)が再び体内に侵入してきたときに記憶に基づいてすばやく対応し、速やかに体外へ除去する。

 

この免疫機能を利用した例が予防接種です。体内に病気の原因となるウイルス、細菌または菌の産生する毒素の力を弱めてほんの少量だけ体内に入れ、体内に防衛体制を作ります。

 

そして、その後は体内に細菌やウイルスが入ってきても、体内にできた防衛体制で病気を予防する仕組みです。

 

病気を引き起こす原因には、免疫力の低下による細菌やウイルス感染、またはアレルギー疾患や自己免疫疾患など免疫システムの異常があります。

 

免疫システムで重要なのは、過剰反応などで体内の健康な細胞を攻撃して体力を消耗することがないように、迅速かつ有効的に反応することなのです。つまり、免疫機能は免疫のバランス能力が最も大切なのです。

 

 

 

心と体のバランス

 

 

 

心も体も気持ちよく過ごしたい。それは全ての人の願いです。でも自分の体のしくみを本当に理解している人はどれだけいるのでしょうか。

 

最近の免疫学の研究で、環境の変化が交感神経に影響を与え、それに伴って白血球の中の顆粒球とリンパ球のバランスが変動し、多くの病がこのバランスが崩れる自律神経の破綻が原因となることがわかってきました。

 

疲れやストレスを抱えると、顆粒球を支配する交感神経が活発になり、増えすぎた顆粒球が粘膜を破壊して胃かいようやガンの発生原因になります。しかし、休養などで免疫力を高めるとリンパ球が再び増え、バランスが回復し病気を治癒できるのです。

 

 

 

免疫はどうやってできるのか

 

 

 

私たちの体に異物が侵入すると、その異物に対して免疫(抗体)ができ、免疫が一度できてしまえば、その異物が原因となる病気にはずっとかからなくなる、という現象はだれでも知っています。

 

私たちの体にはいろいろな細胞からできています。殆どの細胞は本来持っている多様な機能のごく一部しか使っていません。

 

例えば腸の細胞は吸収する能力、神経の細胞はネットワークを作って知覚を伝達する能力、また生殖細胞だったら卵子や精子をつくる能力、というようにそれぞれの細胞が使っている能力は非常に偏っています。

 

ところが私たちの体の中には単細胞時代だった頃の細胞と同じように多面的な仕事をこなす細胞が残っています。それが免疫に関わる細胞の一つである白血球です。

 

 

 

免疫システムの要は免疫をつかさどる白血球

 

 

 

白血球は普段は体の血液の中をくまなく循環しています。その白血球は異物が入ったときにその場にちゃんとたどりつけるように、いつも体内を巡回しながら監視体制をしている細胞です。

 

私たちの体をウイルスや細菌の侵入から守る免疫システムの要になっているのは白血球です。白血球にはいろいろな仲間がおり、それぞれ得意分野をもって免疫システムの為に働いています。

 

その仲間はリンパ球や顆粒球、マクロファージに大きく分けられます。さらに、リンパ球はT細胞やB細胞、NK細胞など個性的な働きを持つメンバーに分類されます。

 

 

 

免疫異常と病気

 

 

 

1998年に注目すべきニュースが報道されました。それは38年ぶりに結核患者が増加したという内容です。ほんの数十年前まで結核は命を落とす致命的な病気でした。しかし、日本人の栄養状態がよくなるにつれ、結核にかかる人の割合も減少していました。

 

しかし、本来感染力の弱い結核菌に感染する人が再び増加している現象は、残念ながら現代人の免疫力が低下しているのが現状のようです。また、ここ30年ほどでアレルギーや自己免疫疾患などの免疫異常で起こる病気で悩む人が飛躍的に増加しています。

 

例えば花粉症は、今や日本人の5人に1人が発症しているといわれ、国民病となりつつあります。さらに近年急増しているのが、アトピー性皮膚炎です。

 

花粉症はスギなどの花粉に、アトピー性皮膚炎は特定の抗原に対し、体が過剰に反応する免疫異常から起きます。これらの症状は免疫が正しく機能すれば最終的には改善に繋がります。

 

 

 

免疫力は未知の病に対する防衛システム

 

 

 

最近、新型インフルエンザの脅威に警戒が強まっています。もともと、鳥インフルエンザウイルスは感染力が極めて弱いウイルスです。

 

しかし、鳥インフルエンザウイルスが突然変異して新型のインフルエンザウイルスが発生したり、鳥インフルエンザウイルスと人間のインフルエンザウイルスが混ざると、人間から人間へ感染する新型インフルエンザウイルスが発生する可能性があります。

 

厚生労働省は、もし新型インフルエンザウイルスが発生して全国的に流行すると、国民の約1/4の人が感染し、病院を受診する患者数も最大で2.500万人と予想しています。

 

残念ながら、現時点では新型インフルエンザウイルスを確実に予防できる手段として使用できるワクチンはありません。しかし、免疫力を向上させることで、免疫機能が正しく働き、病気にかかりにくい体にすることは充分可能です。

 

 

 

免疫アップにはどんな心がけが必要か?

 

 

 

私たちの心と体は非常に密接につながっています。例えば、ひどく心配なことがあれば、食欲は落ちるし元気もなくなります。このように心と体の二つをつなげているのが自律神経です。

 

自律神経はありとあらゆる細胞を支配し、白血球も支配しています。免疫アップを目指すなら、「むり」をせず「らく」をしないことです。強いストレスをできるだけなくし、メリハリのある心のあり方や生き方がバランスのよい状況を生みます。さらに、薬の多用を避け、食などの生活改善も大切です。

 

 

 

免疫情報伝達物質、「トランスファーファクター」の発見

 

 

 

近年の研究で、トランスファーファクター(因子)は免疫システムの過剰反応を抑え、免疫力を、最高437%も高めることが分かっています。このトランス ファーファクター(因子)は、人間の体内に存在し、母親の母乳にもトランスファーファクターが含まれています。

 

さらに、近年の科学は、トランスファーファクター(因子)が牛や鳥類から抽出・濃縮され、種を問わず、人間にも利用できることを発見しました。この発見は抗生物質に次ぐ、偉大な発見ともいわれ、人類の健康に及ぼす貢献が評価され始めています。

 

 

 

【免疫システムの基本】

 

 

 

強い免疫システムが健康な生活への鍵

 

 

 

身体の中には驚くほど複雑な器官、組織、そして細胞からなるネットワークがあります。バクテリア、細菌、ウイルス、毒素、寄生虫など何百万もの外敵の中で、私たちが健康でいられるように、これらの組織は、毎日調和を保って働いています。

 

これが免疫システムなのです。怪我をしたり病気になった時以外は、私したちは免疫システムについてあまり考えることはありません。

 

しかし毎日、いついかなるときも、免疫システムは様々な外敵から身を守るために闘ってくれているのです。たいていの場合、これらの闘いで免疫システムは外敵に勝利しています。

 

しかし防衛システムがウイルス、細菌、栄養のない食事、寝不足、忙しい毎日の生活などのような環境要因によって弱まっていると、病気になることがあります。また、たとえ病気にならなくても肥満になったり、疲労感や体力の衰えなどを感じるようになります。

 

免疫システムは健康的な体重レベルの達成と維持に対しても重要な役割もあります。太りすぎの人の免疫システムは正常に機能していない場合が多く、健康面からだけでなく、ウエイトロスにおいても免疫システムを正常化することは重要です。

 

 

 

免疫システムの効果

 

 

 

免疫システムは事実上、身体のあらゆるシステムと関わりあっています。特に、脳が免疫システムに影響を与える一方で、免疫システムのほうも脳に情報を与えていて、お互い深い関係があると考えられています。

 

免疫システムが最高に機能を果たしていないときには、その他の身体の部分も損なわれているため、外敵からの攻撃を受けやすくなります。

 

そしてその他の身体の部分と同じように、免疫システムはその最高の機能を果たすために栄養を必要としています。駄菓子など栄養のない食べ物を食べ、運動をほとんどせず、またストレスの多い生活をしていると、免疫システムは身体を守るために過剰な働きを強いられます。

 

例えば、炎症反応は、腕に怪我をしたときのように、感染や傷害に対する免疫システムの即時の反応です。ほとんどの場合、免疫システムがこのような問題に対処している間に、免疫細胞はケガをした部分や炎症から退散し、赤みや腫れが引いていきます。

 

しかし、時には免疫細胞が退散せずに炎症が継続し、体内で慢性的症状を産み出しているときがあります。慢性的な炎症は、中高年者の間において恐れられている病気の多くを駆り立てるため、医療や科学分野で最近注目されてきています。

 

科学的研究では、最初の段階で炎症反応をうまく処理し、免疫システムをサポートすることが人生における健康生活への最善のアプローチであるとされています。

 

 

 

なぜ私たちは病気になるのか。

 

 

 

自律神経は外的環境で絶えず変化しています。自立神経が「ほどよく」バランスをとり、揺れていることによって健康は保たれます。しかし、自律神経が偏って働くと体調不良が起きたり病気になります。

 

そのアンバランスの大きな原因がストレスです。病気の原因の80%近くがストレスや薬剤の誤用にあるといわれています。現代社会とは、人間関係や仕事などで精神的ストレスが過剰に働き交感神経を緊張させる社会です。

 

交感神経が強く継続すると顆粒球が増え、顆粒球が粘膜組織を攻撃し、胃かいよう、潰瘍性大腸炎、歯周病など炎症性に疾患を起こします。さらに、私たちの体 内では毎日、数千個のガン細胞が発生していますが、通常はリンパ球(NK細胞やT細胞)が働き、ガン化した細胞を除去してくれるため、ガンにならずにすんでいます。

 

ところが、交感神経が有意になり、顆粒球が増えるとリンパ球が減り、ガン発生の原因にもなります。また発病にいたらないにしても、手足が冷たい、脈が速い、便の出が悪い、眠れない、顔色が悪いなどの症状がでます。

 

反対に副交感神経が有意になり、リンパ球が過剰に働くと、さまざまな攻撃に過敏に反応し、気管支喘息、花粉症、アトピー性皮膚炎などアレルギー疾患が発生します。

 

 

 

心のあり方によって免疫力は高まる。

 

 

 

自律神経をうまく機能させ、免疫力を高めるにはどうすればいいのか。その鍵を握るのが「心のあり方」です。心配事を抱えて苦悩する心理状態は、まさに交感神経の緊張状態です。

 

リンパ球が減り、分泌現象が抑制され、唾液や便、尿が出なくなり神経伝達がブロックされます。こうなるとどんどん心配事にのめりこんでいき、堂々巡りを断ち切れなくなってしまいます。それが深みにはまれば、身体的な病気のみならず、うつ病などの精神的な病にもなりかねません。

 

このようなときは、自律神経と免疫力の関係を知っていれば、「今、危ない領域に入っているな」と気づき、自分を取り戻すことも可能であり、病気になるということも防げるのです。まさに、心のあり方で免疫力は回復できるのです。

 

また、最近の免疫学では笑いが免疫力を高めることが証明されています。ストレスには、無理に笑っても効果があるといわれています。

 

仕事や人間関係で悩み多い時代ですが、免疫システムが分かっていれば、悩むことを辞めるように自分の精神状態をもっていくともでき、「心の持ちよう」で自立神経と免疫力のバランスが保たれるのです。