構成詩[電話でのコミュニケーション](文責:黒永敬)

 

 

 

 

ナレーター

 

これから聞いていただくのは、

あるお客さまセンターで実際にあったことを

再現したものです。

 

日ごろ、何気なく見逃していることの中に潜んでいる

大切な一人ひとりの思いを

改めて見つめ直してみたいのです。

 

ある日の食堂での会話です。

 

 

女性社員A

 

そうそう、午前中、いやな電話ばかり受けたのよ。

以前から、電話をかける時や受ける時は、

自分の名前を名乗ることを社内CSとして

徹底しようとしていたじゃない。

 

 

女性社員B

 

そうよね、もう随分前から言われているわよね。

 

 

女性社員A

 

それなのに、今朝一番の電話で、いきなり

「料金部の鈴木さんいますか」って言って、

自分の名前も名乗らないのよ。

 

相手に名前を聞くのは、

なんだか相手の失敗を指摘するようで、

失礼だとは思ったけど、

誰からの電話かを知らせないといけないし、

「どちら様ですか」って聞いたの。

 

そうしたら、うるさいな、さっさとつなげばいいのにとばかり、

やっと自分の名前を言ってくれたのよ。

中には、あっ、失敗したなって感じで

はっきりと自分の名前を言ってくれる人もいるけど、

ああゆうの、ものを人に頼む姿勢とは思えないわ。

本当にいやな感じよね。

 

 

 

 

 

 

女性社員B

 

私の職場にもあるわよ。

 

電話を受ける私たちのことを、どう思っているのかしら。

私たちを  電話をつなぐコードとでも思っているのかしら。

気持ちよくつなぎたいと思っている

私たちのことなんかしらんふり。

 

会社の中じゃなければ通用しないことよね。

本当に失礼しちゃう。

 

 

男性社員C

 

そういえば、僕の以前いた職場に、

電話をかけるたびに、先方から何か言われて、

「失礼しました、高橋と申します」

って言っていた人がいるよ。

悪意はないんだけど、習慣を変えるって難しそうだね。

 

 

男性社員D

 

同じようなことなら、僕の職場にもあるよ。

みんなが一生懸命働いている職場にやってきて、

目的の人がいないと、

「今日は誰もいないのか」って言って帰って行く。

 

なにか偉そうな人が多いけど、いい気持ちしないよね。

あれって、自分の存在を無視されたようで、腹立つよ。

偉いって、そういうことかなあ。

 

 

女性社員B

 

「こんにちは」とか「がんばっているね」とか

一言声をかけてほしいわね。

 

でも、どうしてなのかしら。

普段、家で電話する時は、必ず名前を名乗るのに、

会社の中ではそうしないのはなぜかしら。

誰かの家を訪ねる時は、

「こんにちは、佐藤と申しますが、誰々さんおられますか」

と尋ねるのに。

 

 

女性社員A

 

それはきっと、気安さからかもしれないわ。

身内だっていう思いとか。

 

 

 

男性社員D

 

中には、俺は偉いんだ、

お前たちとは違うんだといわんばかりの人もいるよ。

特に、協力会社に電話する時に、すごく気になるよ。

 

俺は東京ガスだぞ  とばかりの高飛車な態度は、

脇で見ていても許せないよ。

グループの一員として、

お客さまへのサービスを展開している人たちに対する態度とは

とうてい思えないよね。

パートナーとして一緒にがんばろう  と口では言われながら、

彼ら、よく我慢しているよ、本当に。

 

 

男性社員C

 

みんな思いを伝えないで我慢しているから、

気づかないんだよ、きっと。

悪意はないはずだと思うよ。

 

 

女性社員A

 

でも、おかしいわ。気づかないからって

やっていいことにはならないでしょ。

誰かが言って気づいてもらわなくちゃ。

こんな思いをずーっと続けていたら、

働く意欲もなくなってしまうわよね。

 

私今日から、おかしいと思ったことは、

すぐに気づいてもらうよう努力しよう。

我慢して、深刻な問題にならないうちに、

私の思いを知ってもらいたいの。

気軽にコミュニケーションできる職場が大切よね。

 

 

男性社員D

 

でも、協力会社の人たちは、そうはいかないよ。

なにしろ、東京ガスから仕事をもらっているんだから。

ちょっとでも、気に障るようなことを言ったら、

何されるかわからないと思っている人もいるようだよ。

 

 

男性社員C

 

そう言えば工事会社がお客さまから苦情の申出を受けた時、

先輩が「またあそこか、もう仕事は出さないぞ」って

言っていたことがあるよ。

力関係で押え込んでいたら、言いたいことも言えないよな。

東京ガスとグループ企業のパートナーシップって何なのかなあ。

 

 

女性社員B

 

会社の中の仕事は、どの仕事も意味のない仕事はないはずよ。

それなのに、責任の大きさ、処遇や契約の違いによって、

おかしいことを無関心で放置しておけたり、

やってほしくないことを嫌だと言えなかったりするのは

おかしいわよ。

 

立場や担当している仕事によって相手への対応が変わるって、

絶対におかしいわよね。

 

 

女性社員A

 

そう、そう。

本当に相手を大事にしようと思っているのかどうかが

問題なのよ。

 

会社やグループの中で、みんなが頑張っているから、

お客様から信頼されているはずよ。

どの仕事もなくてはならない大切な仕事だし、

そこで働く一人ひとりがほんとうに大切にされ、

気持ちよく働けて、

はじめてお客さまに満足していただけるサービスが

できるはずよ。

 

一人ひとりが、仲間を本当に大事にしようと思って

関わっていくことが、大切なんだと思うわ。

 

 

男性社員D

 

そのためにも、みんなが、

自分の思いを素直に相手に伝えられる職場が

大切なんじゃないかな。

素晴らしいことを素晴らしいと、嫌なことを嫌だと、

変えてほしいことを変えてほしいと、

気軽に、真剣に話し合える職場の風土があるといいね。

 

 

   

 

よし、今日から私たちの職場を、

もっと素敵な働きやすい職場にするために、

みんなに働きかけていくことにしよう。

一人ひとりが責任と自覚を持って働ける職場、

自分の思いを素直に出し合い、

みんなの思いを一つひとつ具体的に行動に移していける、

働きがいのある職場にしていきたい。