事例 5「検査逃れの不正」 

 

私は、現在、大手運輸業のIT部門の主任をしている。 

先日、管理部による情報管理に関する社内検査があり、上司と一緒に、管理部の調査に応じた。 

 

そこで、管理部の課長から、「本来、一定期間内で消去すべきデータを、ちゃんと消去していますか」と聞かれました。 

実際のところ、部署の人たちは皆忙しくて消去作業ができず、消去すべきデータは部門内の共有フォルダに残ったままだったが、この時上司は、「データは全て消去しています」と答えた。 

データが共有フォルダに残っていることを、上司が知らなかったのかもしれないと思い、調査の後で、上司に「実は、データは残っています」と伝えた。すると、上司に「知ってるよ、でも黙ってろよ」と言われた。 

上司が消去すべきデータが残っていることを知ってて、嘘の報告をしたことが分かった。 

上司は事実を話すべきだと思っている。もし管理部から消去するように指摘を受けたなら、早急に消去すれば済むことなので、嘘の報告をする必要はないと思っている。 

上司が嘘の報告をしたことを、管理部の課長に報告したいと思っている。

 

しかし、上司は、普段から威圧的な態度を取る人で、「クビになりたいのか」などと怒鳴ったり、その他にもパワハラのような言動をすることがあったりする。私は上司を怖いと感じている。 

その上司から「黙ってろよ」と言われたのに、管理部の課長に事実を報告すれば、上司から退職に追い込まれてしまうのではないかと、不安を感じている。

 

嘘の報告は問題だが、このまま何も言わない方が良いのかと迷ってしまう。

 

Point

 

・不正を隠す隠ぺい体質がうかがわれる 

・情報セキュリティへの重要性への認識の低さがみられる 

・日常の業務遂行で上司の高圧的な支配がなされ、オープンな会話ができない状況がある 

・パワー・ハラスメントがまかり通る職場環境の中で、部下の能力発揮が制限されている

 

  取組の視点

 

□データ消去の重要性 

・データ消去作業は情報管理における社内検査の対象となっており、放置しておくことによる重大な問題が発生する業務ととらえられている。 

・申立者が、指摘を受けたら消去すればよい程度の問題認識しかもっていないことの深刻性と対応の緊急性がみられる。

 

□管理部への報告の重要性と報告による不利な取り扱いの禁止 

・申出者へ問題の重要性について再認識してもらう 

・申し出内容について口外しない旨伝える 

・システム上でのチェックをすることで事実確認可能 

・プライバシーの保護及び申出による不当な扱いを防止することを約束 

・今後の職場環境の変化(上司の対応、同僚の行動等)の記録と報告の依頼 

 

□データの確保とデータの確認 

・共有ファイルの確保を即刻実施する 

・検査後消去されている場合は、消去の時期を確認 

・検査方法の再確認

適正な検査は、適正な業務遂行とともに従業員を不正から守ることになるのです。

 

□労働実態と業務負荷の調査 

・日常の職場運営状況の確認(上長面談・アンケート調査等) 

○ハラスメントの有無 

○仕事の進め方

IT関連業務では、一方的な指示命令が少なくなく、労働時間も長時間にわたる場合が多くみられる) 

・労働過多と業務全般のミス発生状況の調査 

・メンタルケアの視点での職場環境チェック 

 

□検査実施内容の充実と業務の改善 

・消去状況をシステムチェックし、進捗状況を職場へフィードバックする改善を検討 

・情報管理上必要な消去についてシステム上の自動消去等改善を検討 

 

□情報管理の重要性について再徹底 

・情報セキュリティ・情報モラルの研修実施 

 

□職場環境の改善 

・普段から威圧的な態度をとる上司 

・上司の行動に対する観察の実施及び適切な指導 

・上司への面談(日常の業務遂行状況・業績・職場の課題等について話し合う) 

上司の日ごろの業績について褒め、問題点について具体的に指摘することが大切です。

・アンケートの実施(職場環境・仕事のやりやすさ・情報の提供 

・良好なコミュニケーション(双方向コミュニケーション)が展開される職場づくり 

・職場の課題を常に話し合い改善していく職場風土の構築

常なるイノベーションの文化を構築することは今後の発展に不可欠なのです。