《 管理職に求められるカウンセリング・マインド 》
―部下理解の鍵は「聴く」ことから―
(1) 部下の持つ3つの基本欲求
■上司から認められたい
■個人的に関心をもたれたい
■正しく評価されたい
この部下の持つ3つの基本的欲求をまず十分満たしてあげることが、部下を動機づけ、意欲的にさせることのスタートです。
これらの基本的欲求に応えるためには、部下とのストロークの交換があって始めて実現します。
【ストロークとは】
ストロークとは、あなたがそこにいることを、私は視野に入れていますよというサインです。
【ストロークの種類は】
1.身体的ストローク(タッチス・トローク)
2.言語的・準言語的ストローク
3.非言語的ストローク
これらのストロークが上手に使われていると、相手への欲求に上手に応えられます。
ストロークにはプラスのストロークとマイナスのストロークがあります。
プラスのストローク |
マイナスのストローク |
・具体的な言葉で相手をほめる、励ます、勇気づける ・相手に微笑みかける ・目を見てうなずく ・笑顔であいさつする ・相手の話に耳を傾け話を聴く |
・叱る ・罰する ・非難する ・ダメだと決め付ける ・存在を否定する言葉を投げかける |
○プラスのストロークは、相手をいい気持ちにさせ、行動をプラスの方向に作用させる働きをもっています。 ○自分は相手にとって大切な存在であると確信することができ、喜び・やる気・元気が沸いてきて、その人の内部に自信が生まれます。 |
○マイナスのストロークが偏りすぎると、部下は次第に萎縮し、自信を失い、上司に対する不信感ばかりが募り、問題はなんら解決されない結果となります。 |
○人はプラスのストロークを豊に与えられることにより、「I am OK」というポジティブな自己イメージを形成し、成長への動機づけを強めて行きます。 |
○このマイナスストロークを効果的に生かすためには、日頃からプラスのストロークを十分に与え、信頼関係を築きマイナスンストロークも相手が素直に受け入れる素地をつくっておくことが前提条件です。 |
【最も恐ろしいのは「ストロークなし」】
職場において、部下が上司からのマイナスのストローク以上に恐れるのは、プラスのストロークもマイナスのストロークも送らない「無視・無関心」あるいは「軽視」する対応です。
(2)カウンセリング・マインド
カウンセリング・マインドとは、「共感的態度」のことで部下の本当の気持ち(思い)を感じ取ることです。
相手の話を聴くときに、自分の価値観や先入観をはさむことなく無条件で、相手を一人の人間としてその存在を認め、大切にし、理解しようとする態度です。
自分の価値観や先入観に基づいて相手を正そうとすることなく、まずは白紙で相手を理解しようとする態度なのです。
このような上司の態度は、「この上司ならわたしの気持ちを聴いてくれる、分かってくれる、受け止めてくれると言う気持ち」を部下が持つようになります。
【聴くことの大切さ】
「まずは聴こう」という姿勢でなければ、面接・対話は成功しません。
人は心から聴いてもらえたという満足感を覚えたときに、相手との心の交流ができ、やる気が湧いてくるのです。
部下は自らが抱えている問題や苦しみを上司に聞いてもらっているうちに、心の中で自分の問題や気持ちの整理がついてくることがよくあります。
部下は、上司に指摘されるのではなく、話し合いを通じて自ら気づき、自分が変わっていくのです。そこに「自ら気づき、自ら成長する」自己成長の場が存在するのです。
【人の話に耳を傾ける】
日頃、部下のいうことをよく聴く人のところでは、よく人が育っています。
それに対して、あまり人の話に耳を傾けない人の下では、人は育ちにくいのです。
部下の言葉に耳を傾けることによって、部下が主体的にものを考えるようになり、そのことがその人を成長させるのです。それに反して、上司が部下の言うことに耳を傾けてくれないと、話をすることをあきらめ、ただただ上司の指示通りに仕事を進めることになり、部下の成長は期待できません。
上司としてはどんな場合でも、“部下の話に耳を傾け”、部下の思いを理解し、思いが実現できるよう支援することが必要なのです。
(3)積極的傾聴
「部下の話を聴く」ということは、事柄を話す部下のその背後にある感情まで含めて丸ごと理解しようとする態度・姿勢のことなのです。
①全体の意味を聴く
・人の発言には2つの要素から成り立っています。
■発言内容
■内容の奥にある感情
②部下を正しく理解したかどうかを確認しながら聴く
■内容を繰り返す
■意味を繰り返す
■感情を繰り返す
【話しやすい場の設定】
(1) 気軽な雰囲気(ラポール)づくり
1.雑談から入り、緊張している部下を気軽で打ち解けた気持ちにするよう雰囲気づくりをする
2.「いつも良くやってくれていますね、ありがとう」といった率直なねぎらいの言葉をかける。
3.まず、部下の言いたいことを最後まで自由に話させ、途中で口を挟まないようにする。
4.部下の言い分をよく聴いた後、部下の期待に応えるときは批判的な言い方を避け、なるべくソフトな口調で、丁寧に答える。
5.「君に期待している」というストロークを話の中に入れて、上司の期待や実現して欲しいことを気持ちも含めて部下に分かりやすく伝える。
(2)主体性が発揮できる環境づくり
・話し合いの中では、部下に考えさせ、自分の考えを発言させる。
(3)実現したい狙いに焦点をあわせる
・注意を与える場合は、部下の人間性を批判するのではなく、その事実、行為について話をし、実現したいことに焦点を絞って具体的に変えたいことを伝える。
【面接における留意点】
①座る位置
・部下との距離は、90~120センチぐらいが好ましい。
(自分の感じと相手の感じを推し量り最適だと思われる距離をとって座る)
・座る位置は、正対するより、90度の角度を持って座ることがより友好的に感じるようです。
いろいろ工夫をしてみるとよいでしょう。
②上司の話し合いの姿勢
・優しく、視線を合わせる。
目と鼻を結ぶ三角形のあたりに視線を持っていくと、相手は話を聴いてくれているなと感じるようです。
・姿勢よく、少し前傾姿勢で相手の話に関心を持って聴く。
腕を組んだり、ふんぞり返っていると、相手はあなたが話を聴きたくないんだなと感じてしまいます。
・声の調子は、優しく、丁寧に、相手のペースに合わせる。
早口・大声は部下に緊張感を与えてしまいます。
(4)傾聴の技法
技法 |
内容 |
狙いと部下への効果 |
1.アイコンタクト |
視線を向ける。 “目は心の窓” |
自分に関心を持ってもらっていることが分かる。 |
2.受容 うなずき・あいづち |
受容的な雰囲気で相手にうなずき返したり、あいづちを打ったりしながら聴く。 |
暖かく受容してもらっていることが分かり、落ち着いて話ができる。 |
3.感情への応答 共感する |
話し相手の感情、気持ち、思いを共感的に受け止め、フィードバックする。 「それは大変でしたね」 「それは辛かったでしょう」 「悔しかったんですね」 「とても嬉しかったんですね」 |
気持ちを分かってもらえ、安心感を感じられる。 |
4.繰り返し(要約) 話のポイントを 繰り返す |
話を整理しポイントを繰り返す。 自分の言葉に置き換え、聴いた話の内容を要約する。 |
繰り返されることによって、問題が整理されると共に、自分の思いがより具体的に見えてくる。 ■自分に気づく ■安心と信頼を感じる |
5.明確化 質問する |
話を具体的にし、深めるために、事実、感情、欲求についてより掘り下げるための開かれた質問をする。 テーマに沿って 「それについてもう少し詳しく話してくれませんか」 「あなたはどう感じているのですか」 「あなたはどうしたいのですか」
|
開かれた質問によって、部下が自分の思いに気づいたり、問題を整理することができるようになります。 成長の機会を提供するのです。 |
7.沈黙を待つ。 “沈黙は思考の時間” |
相手のペースに合わせる。 待ち上手は聴き上手 沈黙は単なる沈黙ではない。話し手にとって重要な意味を持つ時間なのです。 相手が聴いて欲しいと思っていると感じたら、これまでの話のポイントを繰り返してあげましょう。 |
ゆっくり考え、自分の思いに気づいたり、問題を整理する時間なのです。気持ちをゆったりと待ってあげることが部下に信頼感を与えます。 |
8.相手に助言、自分の意見を伝える 必要な情報を提供する |
話を十分聴き理解できたら、必要に応じて聴き手の意見、助言、情報等を伝えます。 |
聴き手の考え方や価値観を押し付けるのではなく、選択肢として情報提供することにより、責任を持って自己決定の幅を広げることになります。 |
【聴き手の5つの態度】 E.ポーター(アメリカの経営学者)
①調査・診断的態度 |
△ |
原因を調べるために詮索、尋ねる。 |
②解釈的態度 |
△ |
上司の見方で意味を説く 「○○さんは管理畑が長いから営業のことはよく分からないよな」 |
③評価的態度 |
× |
上司の評価尺度で善悪を測る。 「大事な時期に休みがちで困る」 |
④支持的態度 |
◎ |
同意、激励、慰め、安心を与える。 不安を軽減する。 「大変だね、でもきっと実現できるよ」 「私にはできることがあれば、いつでも言ってくれよ」 |
⑤理解的態度 |
◎ |
部下の言葉の奥にある感情、ショック、考え方、ものの見方を正しく理解しようと心を込めて話を聴く。 相手の言うことを繰り返し、相手の気持ちに寄り添いながら言葉よりも感情を受け止める。 「そりゃ辛いな」 「眠れないほど心配なんだね」 |
【5つの態度の使い分け】
➁の解釈的態度、➂の教化的態度は、最小限にとどめたい。
➀の調査・診断的態度は、必要ではあるが、こうした質問が続くと部下を萎縮させる。
➃の私事的態度,➄の理解的態度を心がけるよう努力しましょう。
みんなが気軽に話しだせる雰囲気は職場を活性化します。
元IBM会長権CEOのルイス・ガースナーは、リーダの条件について次のように述べています。
「企業の幹部は、末端からCEOまで全員が、指導者としてのスキルのうち感情の部分を磨くべきだと私は確信する」
経営の原点は
理屈・理論ではなく
感情を共有しお互いを理解しあうことなのです。
厳しい環境を乗り越えるには
単に「仕事だから」と思う以上に
互いの心を大切にする姿勢で取り組む必要があるのです
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