事例17「部下との関係」 

 

私は、52歳。営業の仕事をしている。現在の会社に中途入社し、本社で課長職についていた。業績も上げ、会社から認められ、充実していたが、リーマンショック以降、これまで以上に働いているのに、思うように契約が取れなくなり、業績は下がっている。上司から叱責されることも多くなり焦り、精神的ストレスは溜まる一方。お酒は弱いが、寝る前に一杯飲むのが癖になりつつある。休日はできるだけ体を休めているが、仕事のことが気になり、休んだ気になれない。最近は、イライラして部下や妻に当たってしまい自己嫌悪におちいる。

数日前、大口の契約が決まりそうだったが、結局、その契約を取ることができなかった。交渉の過程でちょっとしたミスをした部下のGに「おまえのせいで契約が取れなかった。どう責任を取るんだ。役に立たない奴だ。辞めてしまえ」と怒鳴ってしまった。

Gのミスはたいしたことではなく、契約が取れなかったはGのせいではないことはわかっていた。自分の八つ当たりだった。怒鳴った後、しまったと思ったが、その場では謝罪できなかった。

Gは真っ青な顔をして謝っていた。翌日以降、3日間、Gは体調不良を理由に休んでいる。1回怒鳴られたくらいで3日も休むのは社会人として問題だとも思うが、怒鳴った自分も悪いと反省し、電話をして謝った。

Gは「怒られて当然です。自分はだめな人間です」と落ち込んだ様子。その後Gは出勤してきたが、休みがち。同僚の話では精神科に通院しているという。Gに話しかけると明らかに緊張し不安な様子を見せるので、容態を聞くのもためらわれる。

 

上司としてどのように対応したら良いのか迷っている。

 

Point

 

・課長職に昇格したことによるストレスと周囲への対応の変化

・誤った行動に基づく部下への影響と適切な修復

・部下のメンタルケア

・問題の本質への対応と具体的な取り組み
 

    取組の視点

 

□起こりやすい昇格時のストレス

相談者は、課長職への昇進とその期待にこたえようとするストレスが生じて周囲の人に八つ当たりをするなど、精神的に参っている状況にあるようです。

この様な場合、まず自分を見つめなおすことが大切です。 

 

□誤った行動により悪化してしまった職場環境の修復 

その方法はいくつかあるようです。
はじめに、最近の自分について振り返り、記録をとってみましょう。 

その記録を読み直し、不足しているところを書き加えるとともに、行動で問題と思われるところに赤線を引いてみましょう。

そして、自分はどうしたかったのか、どうすればよかったか、誤った行為によって生じた問題を修復する為には何をすればよいのか、今できる最善の策を書いてみるのです。もう一度それを読み直し、早速行動に移してみてください。

 

例えば、部下のGに時間を取ってもらい、しっかり謝罪をしましょう。そして自分がなぜそのような行動に出たかをBに話してみることです。話をすることにより、Bの理解を得られるとともに、自分自身も今抱えている問題を整理することができ、新たな解決策を思いつくかもしれません。少なくとも、幾分すっきりした気持ちになるでしょう。

 

このとき、Bの常日頃の活躍をしっかり評価し、Bの行動について感謝していることをしっかり伝えましょう。

また、精神的にまいっているBへの気配りをするとともに、通院していることを聴いて心配しており、しっかり治してほしい旨伝えてみましょう。

Bの性格は真面目ですべてを自分の責任として受け止める傾向がありそうなので、課長である自分と一緒にこの問題に取り組んでいこうと考えていることを伝えたいものです。

(禁句)

ここで「がんばれ」とか「すぐにでも」と言った激励の表現は、かえってBをあせらせて、追い込んでしまうことにつながるので禁句なのです。気をつけましょう。 

 

□上司への相談 

次にできることは、上司に相談することです。
中途入社で期待されていることは間違いないのですから、がんばるのも当然でしょう。

しかし、全く違う会社のそれも管理職となれば、うまくいかなくて当然。上司である部長に相談してみることです。もちろん自分の考えをしっかり整理したうえで、自分の取組と成果が結び付かない現状について相談してみましょう。成果を上げることが目的ならば、上司を信頼して相談してみることです。

上司は経験と実績を積み重ねてきているはずであり、良きサポーターになってくれるはずです。