東京ガスにおける「パワー・ハラスメント」への取組(2005)
中央労働災害防止協会によるパワー・ハラスメント防止に関する企業の取組について、ヒアリング調査を受けての回答
<ヒアリングの目的>
職場におけるパワー・ハラスメントの状況およびメンタルヘルス面への影響、企業における認識およびその対策等、その実情については必ずしも明らかになっていない。
そこでパワー・ハラスメントの問題に取組んでいる企業にヒアリングを行い、パワハラ問題に関しての企業への影響、取組み方法、今後の課題などを明らかにしていき、これらをアンケート調査の補足説明資料とすること。またこれらの報告が今後パワハラ問題への取組み指標となり、実践段階での問題を浮き彫りにすることを目的とする。
<回答>
1 事業場の概要について
1) 従業員数 8700人
2) 業種 電気・ガス・水道・熱供給業
3) ヒアリング対象者 コミュニケーション支援室トップバイザー
2 パワー・ハラスメントの実情について
1) 社内でパワー・ハラスメントに関しての調査はしたことはない。また調査をしたほうがいいという認識はいまのところ社内にはない。しかしパワー・ハラスメントの概念に含まれる事象はこれまでの相談事例等にもみられており、ケースバイケースで対応してきているが、構造改革等の環境変化を視野に入れた独自の定義を社内で作っていこうと思っている。
2)職場のコミュニケーションの相談窓口にこれまでも多くの相談が寄せられてきているが、最近ではパワー・ハラスメントという言葉を持っての相談が寄せられるようになってきた。パワー・ハラスメントは職場の運営上問題である。いままでも、これからも「パワハラはある」と認識している。
3 取組みの経緯、背景
1) 8年前より、人権研修参加者を対象にアンケートをとり、職場や家庭・地域社会において「ちょっと気になる事例」を用いて人権研修をおこなってきている。人権問題としては広く社会的な問題も取上げているが、職場で働く自分達の人権という視点で考えたとき、パワー・ハラスメントも重要な問題だと考えている。
2) パワー・ハラスメントは職場の仕組みを考えると、どうしても起こってくること。力関係を利用して、嫌なことを押し付けたり、または相手の力を誤解してだまって我慢するようなことが起こっている。これには、雇用形態が様々な従業員が一緒に働いているという状況や、社内業務のアウトソーシング化が進んで仕事を発注する側、受注する側という立場の違いが多く現れてきている状況が強く影響を与えていると考えている。
3) しかし、そういった社内の状況の変化に対して、意識の変化がついていっていないところがある。様々な雇用形態、契約内容で働いている人がいるということは、それぞれに求められる仕事の質・内容、働く時間、責任の軽重等、価値観やものの見方が一人ひとり異なっているということ。これらをきちんと理解しないまま、成果だけを求めるようになっているところがある。期待する成果が上がらないと上司もストレスも大きくなるし、その発散の為にハラスメントをしてしまう、またはそこまでいかなくてもバランスを欠くような言動が現れて部下にストレスを与えてしまうこともあると考えている。そういったことに注意を喚起し「誰もが元気の出る職場」づくり目指しているなかで、パワー・ハラスメントの防止には大いに注目している。
4 社内でのパワー・ハラスメント対策の位置づけ
1) 会社の行動基準にパワー・ハラスメントという文言を取り入れたということは経営トップの意思表示。経営方針として従業員を大事にしているというメッセージをトップは出している。パワー・ハラスメント、セクシュアル・ハラスメントは労働者にかなり精神的なダメージを与え、生産性をダウンさせるということがある。労働関係をよりよいものとすることが企業の大事な責任であるということを自覚した上で、このメッセージを出している。
2) 行動基準には、人権と言う視点に立って、ハラスメントをなくそう、そういったものがない職場づくりをしていこうという気持ちが込められている。職場全体、企業全体にその考えを浸透させるのはもちろんのこと、将来的には協力関係にある企業とも行動基準を共有していきたいと考えている。
3) 相談窓口を設置しており、年間60件近くの相談が寄せられ、その解決に取り組んでいるが、経営トップはこの相談窓口を「非常に気軽に受けられる窓口」と評価している。ほとんど実名で相談してくるのが特徴である。
5 パワー・ハラスメント対策の内容
1) 行動基準に「パワー・ハラスメント」の文言を取り入れる。
人権を尊重するということで、セクシュアル・ハラスメントやパワー・ハラスメントなど個人の尊厳を損なう行動をしない、また見過ごすことも許さないと明記している。契約形態の違いによらず、事業場で働くすべての人を適用範囲としている。
2) 人権啓発担当者を対象にパワー・ハラスメント講演会の実施
職場からあらゆる差別、ハラスメントを一掃するために、担当者の認識を高める目的で実施。
1回実施。
3) 相談窓口の設置
コンプライアンス相談窓口と人権・セクハラ・職場コミュニケーションの相談窓口と2種類の窓口を設置している。相談はメール、電話・手紙で受け付けている。パワー・ハラスメントの相談は職場コミュニケーションの相談窓口に入る。電話やメールで受付後、原則として担当者が面談を行い今後の対応について話し合う。
6 今後の課題
1) 今後は、相談窓口に寄せられた事例をもとに、ハラスメントを受けた人がどんな思いでいるか、またハラスメントをする人の思いはどんなものかを感じ取り、組織の中でどういったことがその原因となっているのかを明らかにし、問題解決のためのケースワークプログラムを開発したい。社内で問題解決の為に試行錯誤したことが人権研修や会社の仕組みづくりに生かしていけると考えている。
2) 事例を人権啓発の担当者や人権研修の中で紹介することによって、みな同じではないということを共有化してきたい。人がそれぞれ違うということを知っていれば、「違う」ということで起こるストレスは軽減されるとともに、その違いを生かしていく「柔軟で多様な職場」づくりが可能ではないだろうか。多角的な視点を持ってもらうことを研修の一番の主眼にしている。
3) パワー・ハラスメントなど社会で注目されている情報を職場にあった形で体系化して発信していくこともひとつ人権の担当者として重要な役割である。社内で受け取りやすい形で多くの情報を今後とも発信していきたい。
以上
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