事例 4「タイムカードの不正」
私は、現在、販売会社の営業部で事務の仕事をしている。
ある朝、営業部のA課長(46歳、既婚、男性)が、部下のB氏(26歳、パート、女性)のタイムカードを始業時間に合わせて押しているのを見た。B氏は、この日遅刻した。
B氏は既婚者で、まだ子どもが小さく、病院に連れて行ったりするため、遅刻や早退が時々ある。以前も、B氏が早退した後、定時になるとA課長がB氏のタイムカードを押しているのを、私以外の同僚が目撃した。
B氏は、自分ではタイムカードを押さずに帰っているので、A課長が定時に押すことを2人で決めているのだと思う。
A課長とB氏は、普段から仲が良く、昼食を一緒に食べに行っている。A課長は、他の従業員には一切そのようなことはしない。
最近、A課長がB氏の代わりにタイムカードを押しているのを頻繁に目にする。
私を含め従業員の間では、「不公平だ」とか、「おかしいのではないか」という声が広がっている。
とうとう、同僚のⅩ氏(30歳、契約社員、女性)が、黙っていられずに、「A課長のやっていることは、不正ではないか」と、部長に訴えました。部長がA課長を注意したところ、A課長は、「自分は、そのようなことはしていない」と否定したらしい。
その後、A課長は、Ⅹ氏にきつく当たるようになったと感じている。
そのため、部長に相談しても状況は改善しないと思ってしまった。どうしたら良いのか、誰に言ったら良いのか、わからない。
Point
・不正な行動を許さない職場風土を大切にする
・そのことを訴え出る勇気をたたえ、会社はその行動を支援することを表明する
・個人的な事情に対する配慮を行う場合には相談者にそのことを明らかにし、会社が定める方法により行う
・個人的な関係を背景にした不公平な措置は職場への影響が大きく、職場の生産性の低下をもたらす。
・たとえその行動が正当性を持っているものであっても、周囲の人たちにはその背景で行われた行動と取られてしまうことがある
○リスク管理のため、管理者と部下の個人的な関係を禁止する企業もあるようです
取組の視点
□タイムカードの不正刻印についての確認
・申し出内容の確認
○申し出内容の文書化(申出者が記憶・記録している事実)
○誰かに相談したかの確認
□他の目撃者の確認
・Xおよび他の目撃者の確認と他目撃者からの直接の内容確認(伝聞のままにしておかない)
(いつ・どこで・誰が・どのような行為を、その時のBの勤務状況は)
・Xおよび他の目撃者への協力要請の可否
(留意点)
Xから他の目撃者に事前了解を取ってもらいます。
直接相談対応者から接触すると、Xが勝手に他者の目撃情報を漏らしたとして、Xへの反感を生じかねなません。
・Xに対して正規に相談窓口への申し立ての意向を確認
○プライバシーの保護・問題解決への会社の方針と支援(会社のルールに従って対応)
□AとBとの人間関係の確認
・AとBが「普段から仲が良い」とする理由の確認
□申し出後のAの態度の変化
・それまでのAのXに対する態度
・Xへの態度の変化と変わった時期
・その変化にXはどのように感じているか
(留意点)
相談対応者は、守秘義務を負います。
決して本人の了解なしに、相談があったこと、相談の内容について他者へ持ち出してはいけません。
持ち出す必要があると考えた場合は、必ず相談者の了解を得て行います。
了解を得られない場合は、相談者の胸の内にとどめておき、その後の状況を観察します。
心配な状況が確認できた時は、相談者にその旨を伝え、正規の対応の仕方と、相談者の保護について伝え協力を得ましょう。
(配慮事項)
相談者は、相談後、職場に変えると上司の態度が気がかりになります。相談したことが上司に伝わってしまったのではないかと。上司の視線がちょっと自分のほうに向いただけで、心配になったりします。誰でもが当然のように陥る被害妄想の気分になってしまいます。このような場合でも、相談対応者は、守秘義務はしっかり守られているので、安心するように伝えます。もし上司が気になる対応を取るようであればその旨を記録し、直ちに相談対応者に報告することをお願いします。
□問題解決への要望
・問題解決を図るにあたっての要望を尋ねる
□解決手順の確認
・事実確認の手順(誰に・いつ・何を目的に・どのような方法で調査を進めるか)を伝え、申出者の了解を得る
□今後の動向についての記録要請
・事実調査等の対応に伴い、仕返しとして不当な取り扱いの可能性も考えられることから、
今後身の回りに起こることの記録を要請する
・問題が発生した時は遅滞なくその旨の報告をお願いする
□その他の問題の有無の確認
・日ごろのAの行動、職場環境など問題と考えられる事項があれば申し出てもらう。
□Xおよび他の目撃者からの事情聴取
・申立者および本人了解のうえ、Xおよび他の目撃者からの事情聴取
・プライバシーの保護(事情聴取にかかわることについて他言無用)
・他に得た情報を持ち出すときはその内容と手順について本人の了解を必ず取ることが大切です。
□Bへの就業上の配慮の可能性の確認
・育児・介護休業法等の精神に基づき会社ができる配慮・支援について検討する
□Aへの事情聴取
・日ごろの職場管理及び業務遂行への感謝の意を伝える
・職場運営上の問題についてオープンな質問で尋ねる
・申し出があったことを伝え、その事実があるか否かを尋ねる
・Aに対して十分な釈明の機会を与える
・配慮の上の行為であったとしても、正当な行為でない旨を明確に伝える
・不公正な配慮は、職場で働く他の人にさまざまな疑念を抱かせることになり、
職場の生産性に大きく影響する職場運営上の問題であることを伝える
□部長への事情聴取
・Xからの相談の事実の確認
・部長としての対応の確認
・AのXへの嫌がらせ事実への認識の確認
・部長としての職場管理責任の確認・再徹底
□申出者への報告
・調査結果とその後の措置の報告
・調査等に時間がかかる場合は、その旨伝え、適宜報告をする
□A・B・部長への処分
・就業規則に則り適正な処分を行う
□再発防止策の実施
・再発防止のための適切な対応策を講じる
○発生事例の開示とルールの徹底(職場ミーティング・社内研修等)
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