事例 3「同僚の状態が心配」
公私ともに親しくしている同僚Aのことで相談したい。
先々週、珍しくAが休みを取っていた。翌日どうしたのかと尋ねたところ、「母親の具合が悪かったので、病院に連れて行ったが大丈夫だ」という返事だった。
また先週、駅のホームでAがぼーっと立ったまま電車をやり過ごすのを見かけた。
心配になり声をかけたところ、「疲れてぼーっとしてしまった」と笑っていた。
変だなとは思ったが、「たまには早く帰って休めよ」とだけ言って別れた。
ところが、今週の日曜日、Aの母親から自宅に電話があった。
母親によると、「ここ1、2か月息子の様子がおかしい、眠れていない様子で食欲もない」とのことだった。
先々週の休みも母親の病気ではなく、Aが駅のホームに立つと電車に飛び込みたくなると言ったので、無理やり休ませた、とのことだった。
母親は「息子は病院に行きたくないと言うし、今の状態を会社に知られたくないと言うが、日々衰弱していくので心配だ」といっていた。
私は、とりあえずAと話してみると約束した。しかし、下手に刺激をすることになってはいけない、どのように声をかけたらいいのかと悩んでいる。
Point
・まずAとの信頼関係を築くこと
○あわてずじっくりと話を聴くことが大切
○何があっても自分は味方だということを伝える
・抱えている問題を口に出してもらうこと
・自分を見つめなおすきっかけを提供すること
・どのような解決を求めているのかを明らかにすること
□冷静な対応
まずは冷静な対応を。そして大事なのは「共感」です。
突然のことにあわててしまい、「バカなことをいわないで」などと口走らないようにしましょう。
本人は、なぜ死にたいほどつらいかを理解して欲しいのかもしれません。
自殺したいという気持ちは、生きたいという気持ちの表れでもあるのです。
死にたいという背景には、個人的あるいは家族的な要因、社会的・職業上の困難さや、対人関係など様々な要因があると思います。
いろいろな生活環境の中で、生きる希望を失ってしまったケースの根底に共通してあるのが絶望感、孤独感です。
自殺を防止するための対応として“気持ちに寄り添うこと”「ビフレンディング(be‐friending)(友達になる・味方になる)」が大切です。
死んでしまうかもしれない、という事柄に加え、「死を考えるほど苦しんでいるという、その気持ちを受け止める」ことが大切なのです。 自殺を考えるほど絶望している人の気持ちに寄り添います。
孤立無援の状態になっている人を見捨てることなく、共感的に寄り添いながら、」そばに居続けることが重要であり、その人と正直に付き合うことが大切です。
死にたいという気持ち(どうして死になくなったのか、いまそれに対してどう思っているのか、何があなたを追い詰めているのかなど)を聞いてあげてください。
それがうまくいった場合には、死にたいという気持ちが少しずつ和らいでいきます。
あせらずゆっくりと時間をかけて聞いてあげてください。
話したがらないときは、待ちましょう! 時間をおいてもよいかもしれません。
誰かが自分を見守っていてくれることを感じてもらうだけで、道が開けるかも知れません。
抱えている問題について一緒に考えていったり、自分の経験を話しながら、生きることの大切さを伝え、「死んではダメ」だということを知ってもらうのもよいかもい知れません。
<禁句>「がんばって」「自殺なんてとんでもない」など励ましや批判の言葉は絶対にダメ!
取組の視点
□母親への対応
まず同僚Aの母親に、息子さんへの対応についてお伝えし、寄り添ってもらいましょう。
診察を受けることも必要ですが、その前に信頼関係をしっかり築くことが必要です。
あわてず、落ち着いて、しっかりと話を聞いてあげてもらってください。
会社を辞めること(危機的状況から逃げ出す)も大切な選択肢であること前提に対応してください。
診察を受ける場合は、まず内科で体調のチェックをしてもらい、必要があれば心療内科の診察を受ける段取りがよい旨伝えてください。同時に信頼おける病院等を紹介してください。
□同僚・友人としての対応
必要があると感じた時は、母親の了解をとって、自宅訪問することも考えられます。
同僚・友人としてAの気持ちを丁寧に聴いてあげることも解決のよいきっかけとなるかもしれません。
(留意点)
万が一の場合でも、自殺するかの判断は本人がしたのであり、相談を受けた人の責任ではないことをしっかり確認しておきましょう。
□会社は対応
・Aが抱えている問題が明らかになったら、その問題解消に向け当事者にとって最も適切と思われる措置を講じます。
・Aのストレスが職場環境等に起因していることが疑われる場合は、他のハラスメント問題解決の手順と同様な形で進めます。
・みんなが働きやすい職場環境を視野に入れて取り組むことも大切です。
(留意点)
まずは本人の働く環境を見直すことが優先されます。
対応者の全体を見直したい思いを先に出してしまうと、「私のことはどうでもやいのだと」「どうせ聞く気はないのだと」誤解されかねません。あくまでも優先されるのは、相談者の抱える問題への対応なのです。
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